TLR7に対する合成アゴニスト「レシキモド」を使用
東京医科歯科大学は2月1日、低濃度TLR7アゴニストのマウスがんモデルへの全身投与による実験で、免疫チェックポイント療法抵抗性のがんの感受性を高め、効果的な抗腫瘍効果を発揮させることを見いだしたと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科・分子免疫学分野の東みゆき教授と顎口腔外科学分野の原田浩之教授および西井直人大学院生らの研究グループによるもの。研究成果は、国際科学誌「Oncotarget」オンライン速報版に発表されている。
画像はリリースより
今回の研究では、免疫チェックポイント阻害療法の奏効率を高め、高価な薬剤使用量を減らすための戦略として、本来は病原体に対する自然免疫応答惹起の受容体であるToll様受容体(TLR)のひとつであるTLR7に対する合成アゴニスト「レシキモド」の使用を試みた。
レシキモドは、自然免疫応答のトリガーとなる樹状細胞の能力を高め、ウイルスやがんに対する適応免疫応答の要となるキラーT細胞の能力を高めることが知られていたが、血中サイトカインの上昇によるサイトカインストームのために、臨床応用開発は皮膚がんや腫瘍内への局所投与に限られている。
レシキモドとPD-L1阻害剤の併用でがん縮小効果を増強
研究グループは、血中サイトカインの上昇を生じさせない低濃度のレシキモドの全身投与をPD-L1阻害抵抗性の2つのマウスがんモデルにおいて検討。とくに、がん周囲の制御性T細胞の浸潤が顕著な扁平上皮がんにおいて、レシキモド投与単独で腫瘍増大抑制が認められ、PD-L1阻害との併用でさらなる縮小効果が得られたという。がん周囲では、制御性T細胞に対するキラーT細胞比率が顕著に上昇していることが判明。低濃度レシキモドの全身投与は、プラズマサイト樹状細胞およびミエロイド樹状細胞の早期の活性化を促し、抗原特異的なT細胞応答において、制御性T細胞の誘導を抑制してがん周囲におけるキラーT細胞の集積を促進させていることがわかったとしている。
さらに、単独ではがん縮小効果がみられないほど低濃度のレシキモド投与でPD-L1阻害剤との併用薬としての可能性を検討したところ、PD-L1阻害剤のがん縮小効果を増強させ、またPD-L1阻害剤の投与回数を減らしても、同等の抑制効果が得られることが判明したという。
これらの研究成果により、免疫チェックポイント療法の併用薬として低濃度レシキモドの全身投与の可能性が見いだされた。研究グループは、「頭頸部がんのように、がんの抗原性が低く、免疫抑制状態が強いがんに対しての臨床応用が期待される」と述べている。
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