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岡山大学 キスペプチンによる生殖ホルモンの新しい調節機構を解明

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2013年09月05日 PM09:53

内分泌学国際誌に掲載

岡山大学は、同大学大学院医歯薬学総合研究科の大塚文雄教授らの内分泌研究グループが、キスペプチンによる性腺刺激ホルモン等を調節する新しい仕組みを解明したと、8月22日発表した。

(画像はプレスリリースより)研究成果は、7月20日、内分泌学の国際誌「Molecular and cellular Endocrinology」に掲載された。

BMP-4がキスペプチンを制御

研究は、米国カリフォルニア大学サンディエゴUCSDとの共同研究。性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)の分泌調節において、キスペプチンとエストロゲンによるGnRH分泌へのフィードバックの仕組みをBMP-4が制御していることを、マウスGT1-7細胞(視床下部の神経細胞)を用いて世界で初めて明らかにしたという。

性ホルモンの複雑な制御機構

GnRH(Gonadotropin releasing hormone)は、視床下部の神経細胞から分泌される、10個のアミノ酸からなるペプチドで、下垂体前葉から卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体形成ホルモン(LH)を分泌させる。FSHの作用で卵巣から産生される女性ホルモンであるエストロゲンでフィードバックを受け、GnRHの分泌が制御される。この視床下部からのGnRH分泌のリスムが月経周期や排卵、性成熟、思春期発来を起こし、正常な性周期を形成するとされる。卵巣から分泌されたエストロゲンの視床下部のGnRH分泌への指令伝達を、キスペプチンニューロンが担っている。

キスペプチンとBMP-41が今後のカギ

キスペプチンは脳内の視床下部の細胞から放出されるタンパク質で、2001年にヒトの胎盤から発見された生理活性ペプチド。当初は腫瘍の転移を抑制すると考えられていたが、キスペプチン受容体であるGPR54に遺伝的な変異があると性成熟が起こらないことから、生殖機能に関わるものであることがわかってきた。近年では、生殖機能や思春期の発来に重要であることがわかってきている。これをさらに制御するものとして、今回BMP-4の役割が明らかになってきたと説明している。

GnRHとエストロゲンのフィードバックシステムは、未だ十分には解明されていない。今回の成果は、思春期発来や排卵、閉経の機序解明にも一助となると考えられる。

発表では、

思春期の発来や性周期の異常をきたす間脳や視床下部の病気のうち、病態の多くは不明です。キスペプチンと、それを取り巻く調節因子BMP-4に着目することで、今後、生殖機能異常における新しい診断・治療の標的分子となる可能性が期待されます。
(岡山大学 プレスリリースより引用)

としている。(長澤 直)

▼外部リンク

岡山大学プレスリリース
http://www.okayama-u.ac.jp/

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