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前頭側頭葉変性症とアルツハイマー病が有する共通の病態を発見-東京医歯大

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2018年02月02日 AM11:45

根本的な治療法が確立されてない3大認知症

東京医科歯科大学は1月30日、新規に作成した前頭側頭葉変性症のモデルマウスを用いて、病態早期に生じるタウタンパク質リン酸化が、シナプス障害を通じて認知症状を引き起こしていることを明らかにしたと発表した。この研究成果は、同大難治疾患研究所/脳統合機能研究センター・神経病理学分野の岡澤均教授の研究グループと、東京大学の宮野悟教授、名古屋大学の貝淵弘三教授らと共同研究によるもの。国際科学「Nature Communications」オンライン版に掲載されている。

アルツハイマー病、前頭側頭葉変性症、レヴィー小体型認知症の3大認知症は、高齢化社会の日本で大きな社会問題となっている。これらの3大認知症には遺伝の影響が強い家族性認知症と遺伝的要素が目立たない孤発性認知症があるが、家族性前頭側頭葉変性症の中では、タウ(tau)とプログラニュリン(PGRN)の遺伝子変異の頻度が比較的高いと言われている。

アルツハイマー病ではアミロイド、レヴィー小体型認知症ではアルファシヌクレインが脳内の神経細胞の内あるいは外に蓄積して凝集する。一方、前頭側頭葉変性症では、タウタンパク質の凝集が見られるケースと、見られないケースがあり、後者ではTDP43というタンパク質が凝集している場合が多く、プログラニュリン遺伝子変異を伴う前頭側頭葉変性症もこれに相当する。

これらの3大認知症については、根本的な治療法(:DMT)が確立されてない。また、遺伝子変異によって引き起こされる病態についても、どの時期からどのような病態が生じているのか、いつからどのような病態を標的に治療をすれば良いのか、については明確になっていない。

異常リン酸化タウタンパク質がシナプスに局在

研究グループは、新たに作成した変異プログラニュリン遺伝子を持つノックインマウスより採取した大脳組織を用いて、経時的に網羅的リン酸化プロテオーム解析を実施。その結果、TDP43タンパク質の脳内凝集が見られる以前に、タウタンパク質の203番目アミノ酸(Ser203)のリン酸化の異常増加が脳内で検出されたという。さらに解析を進めたところ、この203番目セリンがリン酸化したタウタンパク質(pSer203タウタンパク質)は、ヒト前頭側頭葉変性症患者脳でも確認され、神経細胞のシナプスに局在していたとしている。このような異常リン酸化タウタンパク質のシナプスへの局在は、アルツハイマー病モデルでも報告されており、シナプスを障害して認知症状につながることが示唆されている。そこで、タウタンパク質のAAVノックダウンベクターを用いて変異プログラニュリンノックインマウスの遺伝子治療を行ったところ、減少していたシナプスの数が正常化し、認知障害の症状も改善したという。


画像はリリースより

さらに、研究グループは、プログラニュリン遺伝子変異とタウタンパク質のSer203異常リン酸化の関係を調査。その結果、プログラニュリン遺伝子変異はプログラニュリンタンパク質の減少につながり、プログラニュリンは受容体型チロシンキナーゼTyro3と分泌タンパク質Gas6との結合を阻害することが明らかになった。また、Gas6がTyro3に結合して活性化すると、リン酸化酵素であるPKC、、B-rafによるTyro3下流シグナルが活性化され、タウタンパク質のSer203異常リン酸化につながることが判明したという。そこで、これらのキナーゼに対する阻害薬やAAVノックダウンベクターを用いて、変異プログラニュリンノックインマウスの治療実験を行ったところ、いずれも減少していたシナプスの数が正常化、認知障害の症状も改善したという。

今回の研究より、アルツハイマー病と同様にタウタンパク質を治療開発の標的分子とする戦略が前頭側頭葉変性症においても適応可能であることが示唆され、具体的な治療手法を複数提示された。研究グループは、「現在の認知症研究の焦点となっている発症前の早期病態解明と早期治療法開発を明確に示した点でも、大きな意義を持つと考えられる」と述べている。

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