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東京大学 早産が起きる仕組みを発見、予防法の開発に期待

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2013年08月31日 PM04:17

早産の母体因子と環境因子を発見

東京大学 大学院医学系研究科  産婦人科学講座 研究員 廣田泰氏らは、体質等の母体側因子と感染・炎症の組み合わせが早産の発生を高めること、およびその仕組みを明らかにした、と科学技術振興機構(JST)が8月28日発表した。

(画像はプレスリリースより)
廣田氏はJSTさきがけ研究者でもあり、この研究はJST課題達成型基礎研究の一環として進められている。

早産マウスによる研究

早産は妊娠の約5%に起きており、体質や高齢での妊娠といった母体側の要因と、感染や炎症などの環境因子、多胎などの因子が複雑に絡み合って発生すると考えられている。現在では、子宮収縮抑制剤や抗生剤等の対症療法がとられているが、根本的な克服は困難となっている。また、この領域を研究するために必要な、適切な研究モデルが存在しなかった。

研究グループでは、約半数の個体が自然に早産を起こす早産体質のマウスモデルを確立しており、今回、そのマウスを解析した結果、母体側の因子としてタンパク質「mTOR(エムトール)」による子宮の細胞老化が関与していることを突き止めたという。

早産は細胞老化と炎症の両因子が関わる

また、このモデルマウスに無害な量の細菌成分としてリポポリサッカライド(LPS)を投与すると、100%早産することから、細菌の感染とそれによって引き起こされる炎症が環境要因であり、その結果起こる黄体ホルモン(プロゲステロン)の低下が、早産と密接に関わっていることを明らかにしたと説明している。

プロゲステロンとラパマイシンが早産を抑止

さらに、黄体ホルモンと免疫抑制剤としても知られるmTOR阻害剤ラパマイシンを、早産マウスにあらかじめ投与しておくと、母体にも胎仔にも明らかな副作用はなく、LPSを投与しても早産や死産を予防することができたという。すなわちラパマイシンによって子宮内膜細胞の老化を抑制し、黄体ホルモンを増やして子宮収縮を抑制することで、早産を予防できることがわかった。さらにヒトの早産の臨床サンプルでも、mTORの活性化や子宮内膜細胞の細胞老化が認められており、マウスの早産で認められた経路が、ヒトの早産にも関与していることが考えられるとしている。

妊娠・出産が高齢化しつづけている現代では、早産のリスクは高まっていると言える。
しかし、

妊娠中の薬物投与による胎児への影響を考慮すると、細胞老化をターゲットとする新薬の開発や臨床応用は非常に難しい。既存の薬剤で胎児への毒性がないとわかっているもののなかから、この経路を遮断するものが見つかれば、将来における臨床応用の可能性が見出せる

と研究者らは考えているようだ。研究のさらなる展開に期待したい。(長澤 直)

▼外部リンク

科学技術振興機構プレスリリース
http://www.jst.go.jp/

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