ステロイドホルモンのひとつグルココルチコイド
京都大学は1月24日、グルココルチコイドが免疫を担うTリンパ球の体内循環と免疫応答能の日内変動を制御し、免疫力を高めていることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大ウイルス・再生医科学研究所の生田宏一教授と榛葉旭恒研究員らの研究グループが、大阪大学、九州大学、ドイツがん研究センターと共同で行ったもの。研究成果は米学術誌「Immunity」オンライン版に掲載されている。
画像はリリースより
ステロイドホルモンのひとつであるグルココルチコイドは、強い免疫抑制作用を持ち、抗炎症剤や免疫抑制薬としてさまざまな疾患の治療に用いられている。生田教授の研究室では先行研究により、グルココルチコイドが、免疫機能を担うTリンパ球の生存力を高めるインターロイキン7受容体(IL-7R)の発現を誘導する機能を持つことを明らかにしていた。しかし、日内変動するグルココルチコイドが生体内でどのようにTリンパ球の活動を制御するのかは明らかになっていない。
グルココルチコイド分泌の乱れが免疫力低下をもたらす可能性
研究グループは、グルココルチコイドの濃度が日内変動することに着目し、一日の各時間帯におけるマウスのTリンパ球の変化を解析。その結果、グルココルチコイドがTリンパ球のサイトカイン受容体IL-7Rとケモカイン受容体CXCR4の発現量を夜間に高め昼間に下げていること、その日内変動が、昼間に血中に留まり夜間にリンパ組織に集まるTリンパ球の体内分布の日内変動を引き起こしていることを明らかにしたという。
また、Tリンパ球分布の変化が免疫機能に与える影響を調べるため、細菌感染や抗原に対する免疫応答を解析。その結果、Tリンパ球が脾臓により多く集まる夜間に、抗原特異的キラーT細胞、濾胞性ヘルパーT細胞、胚中心B細胞がより高頻度に誘導され、より強い抗体産生が見られたという。これにより、グルココルチコイドにより誘導されるTリンパ球のリンパ組織への集積が、強い免疫応答を引き起こすことが判明したとしている。
今回の研究により、免疫抑制作用で有名なグルココルチコイドが、生体内ではTリンパ球の循環と応答の日内変動を制御することで、逆に免疫機能を高める働きをもつことが明らかとなった。このメカニズムは、不規則な生活によるグルココルチコイドの分泌の乱れが免疫力の低下をもたらす可能性を示唆するという。今後は、気管支喘息などのアレルギーや関節リウマチなどの自己免疫疾患と日内変動の関係性について、さらなる研究に発展することが期待される、と研究グループは述べている。
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・京都大学 研究成果