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認知症とパーキンソン症状を主症状とする新たな神経変性疾患を発見-北大

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2018年01月19日 PM12:00

3リピートと4リピートのタウタンパク質が蓄積

北海道大学は1月17日、認知症とパーキンソン症状を主な症状とする新しい神経変性疾患を発見し、その発症に関与する遺伝子を同定したと発表した。この研究は、同大大学院医学研究院の矢部一郎准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」誌に掲載された。


画像はリリースより

矢部准教授ら研究グループは、家族歴のある認知症とパーキンソン症状を主な症状とする神経変性疾患を診療していた。臨床症状からパーキンソン症候群の疑いがあると診断したが、診療した患者のうち亡くなった1名の脳を神経病理学的に検討したところ、海馬、、視床下核、黒質などと呼ばれる脳の部位を中心に神経変性が認められたという。この患者は、同部に神経原線維性変化が顕著だったが、アルツハイマー型認知症で認められるような老人斑は認められず、3リピートと4リピートのタウタンパク質が蓄積していた。

この所見は既知のパーキンソン症候群や認知症とは明らかに異なる知見であり、タウタンパク質が蓄積する新しい疾患()と考えられた。そこで家族歴のある同疾患の病態解明を目指して遺伝子解析を行い、その結果を踏まえてこれまでパーキンソン症候群(進行性核上性麻痺)疑いと診断していた家族歴のない患者を対象に、遺伝子解析を行ったという。

家族歴のない患者の約10%で3種類のミスセンス変異

今回の研究では、患者DNAに対し、次世代シークエンサーを用いた全エキソーム解析を主に用いた。またラットのBassoon(BSN)遺伝子に遺伝子変化を導入しHEK293細胞に発現させ、タウタンパク質の挙動を観察。家族歴のある患者を対象に、過去に進行性核上性麻痺の原因遺伝子として報告されている遺伝子やパーキンソン病や認知症の原因遺伝子などを含む50遺伝子を候補遺伝子として解析したが、それらの遺伝子には原因となる変異を認めなかったという。

そこで、次世代シークエンサーを用いた解析をすすめ、BSN遺伝子に発症者に特有のミスセンス変異を発見。このBSN遺伝子について、過去にパーキンソン症候群(進行性核上性麻痺)の疑いがあると臨床診断されていた家族歴のない患者を対象に解析したところ、約10%の患者において3種類のミスセンス変異が認められた。これらの遺伝子変化は健常者データベースには記載がないか、あっても0.5%以下のまれな変化であり、BSN遺伝子は中枢神経に特化して発現するタンパク質を合成することから、この疾患の発症に深く関与すると推定したという。

次に遺伝子変化を導入したラットBSN遺伝子と導入していないラットBSN遺伝子を導入した細胞でタウタンパク質を比較検討したところ、遺伝子変化を導入した方の細胞で不溶性のタウタンパク質が多く存在する可能性を確認。この結果は、新しいタウオパチーの病態メカニズムを示唆するものだという。

BSN遺伝子は加齢とともに減少することや、加齢に伴いタウタンパク質が脳に蓄積することも報告されており、脳の老化と関連している可能性も考察される。研究グループは、「パーキンソン症状や認知症などを呈する神経変性疾患の病態解明や正確な診断法の開発、ひいては新しい治療法の開発の一助となることが期待される」と述べている。(遠藤るりこ)

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