白血病、脳腫瘍に次いで多い小児がん
東京医科歯科大学は12月7日、小児の難治性腫瘍である神経芽腫において高頻度に見られるDNA損傷修復応答機構の異常を発見し、PARP阻害剤「オラパリブ」による治療標的となることを、腫瘍の遺伝子解析と培養細胞や動物モデルを用いた研究で示したと発表した。この研究は、同大大学院茨城県小児周産期地域医療学講座の高木正稔准教授の研究グループが、東京大学大学院医学系研究科生殖・発達・加齢医学専攻小児医学講座の滝田順子准教授らと共同で行ったもの。研究成果は、国際科学誌「Journal of the National Cancer Institute」のオンライン版で発表されている。
神経芽腫は白血病、脳腫瘍に次いで多い小児がんで、国内で年間200人程度が発症する。その3~4割が、自然治癒や長期生存が期待できる低-中間リスク群だが、残りの約6割を生命予後が不良な高リスク群が占める。高リスク群に対しては、化学療法/手術/放射線照射/大量化学療法を組み合わせた集学的な治療が行われるが3~5年無増悪生存割合30~50%と予後不良な腫瘍であり、新規治療法の開発が望まれている。
医師主導治験として第1相試験実施へ
今回の研究によって、神経芽腫のゲノム解析により、神経芽腫の約半数の症例でATMを始めとしたDNA損傷修復応答にかかわる遺伝子の異常があることが判明した。DNA損傷修復応答にかかわる分子の中でも、相同組み換え修復にかかわる分子に異常があるとPARP阻害剤が有効なことが知られている。代表的な例がBRCA1/2遺伝子変異で、PARP阻害剤であるオラパリブが、欧米ではBRCA遺伝子変異陽性の卵巣がんの治療薬として認められている。
画像はリリースより
今回、DNA損傷修復応答にかかわる遺伝子異常のある神経芽腫もオラパリブに感受性が高く、同剤が神経芽腫の治療薬の候補となることが明らかとなった。これを受け、オラパリブが難治性小児悪性腫瘍の治療薬になる可能性を検証するため、世界で初めて難治性小児悪性腫瘍を対象として、その安全性を確認する医師主導治験として第1相試験を実施するという。
今回の研究成果について、研究グループは、小児においてオラパリブの安全性を確認し、有用性を検討するための第2相治験実施へとつなげ、小児難治性固形腫瘍の新規治療法につながることが予想される、と述べている。
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・東京医科歯科大学 プレスリリース