粘液栓による気管支の詰まりが病気悪化へ
秋田大学は11月16日、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症が悪化する仕組みを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科総合診療・検査診断学講座の植木重治准教授らの研究グループがブラジルなどの研究チームと共同で行ったもの。研究成果は「Journal of Allergy and Clinical Immunology」に掲載されている。
画像はリリースより
自然界に広く存在する真菌の一種アスペルギルスは通常、人に対して病原体とはなりにくい。しかし、一部の喘息患者では、アスペルギルスが気管支に定着し、過敏反応が強く出ることで重症化するケースがある。このアレルギー性気管支肺アスペルギルス症では、喘息の特徴である咳や喘鳴に加え、血痰や食欲不振が現れたり、気管支や肺が破壊され元に戻らなかったりすることがある。通常の喘息とは異なり、粘液栓による気管支の詰まりが病気の悪化につながっていることが知られていたが、詳しいメカニズムはわかっていなかった。
エトーシスをおこした好酸球からクロマチンが大量放出され、粘液栓を形成
研究グループは、粘液栓に多く見られる白血球の一種の好酸球に注目。アレルギー性気管支肺アスペルギルス症患者から採取した粘液栓を詳しく観察した。その結果、全ての患者の粘液栓で好酸球はエトーシスという特殊な細胞死を起こしていることが判明。エトーシスをおこした好酸球からは、粘性の高い線維状のクロマチンが大量に放出され、粘液栓が形成されていたという。
そこで、血液から分離採取した好酸球を用いて、気管支でどのようにエトーシスが起きるのかを詳細に検討。その結果、好酸球はアスペルギルスに対して直接反応し、細胞表面のCD11bや細胞内のSykと呼ばれるタンパクを介して活性化することで、エトーシスに至ることが明らかになった。また、エトーシスを起こした好酸球は種々の殺菌作用を有するタンパクを放出するものの、アスペルギルスはこれらに耐性を有していることもわかったという。
今回の研究研究結果について研究グループは、粘液栓の原因になっているクロマチン繊維の除去、好酸球の活性化とエトーシスの制御といった、これまでにない新しい治療方法が開発されることが期待される、と述べている。
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・秋田大学 プレスリリース