継続的なモニタリングに課題があるホルムアルデヒド
物質・材料研究機構(NIMS)は10月23日、シックハウス症候群の原因となるホルムアルデヒドを継続的にモニタリングできる小型センサーを開発したと発表した。この研究は、NIMS国際ナノアーキテクトニクス研究拠点フロンティア分子グループの石原伸輔主任研究員らが、産業技術総合研究所(AIST)ナノ材料研究部門と共同で行ったもの。研究成果は、米国化学会の学術誌「ACS Sensors」のオンライン版で公開されるという。
画像はリリースより
建材の防腐剤などに用いられるホルムアルデヒドは、健康被害(シックハウス症候群)を引き起こすことが問題となっており、また発がん性も疑われている。そのため、世界保健機関(WHO)では、室内のホルムアルデヒド濃度を0.08ppm以下に維持管理するよう推奨している。しかし、ホルムアルデヒドを検知するには、高価で大型な装置が必要であったり、小型の装置では測定毎に検出タグの交換が必要であったりするなど、継続的にモニタリングするには課題があった。
センサー材料と2つのLEDを組み合わせた小型装置を試作
研究グループは、カーボンナノチューブを使って、ホルムアルデヒドを繰り返し検知できるセンサー材料を開発。半導体の性質をもったカーボンナノチューブは、酸性ガスに応答して導電性が上昇する。ホルムアルデヒド自体は中性だが、ホルムアルデヒドと反応すると、ごく微量の酸性ガスを発生する物質を組み合わせることで、カーボンナノチューブの導電性が変化してホルムアルデヒドを検出することが可能だという。導電性の変化を抵抗計で測定した場合、ホルムアルデヒドの検出限界は、0.016ppmと極めて高感度。しかも清浄な空気によって酸性ガスを除くことでセンサーは繰り返し使用することができたとしている。
さらに、このセンサー材料と、2つのLEDを組み合わせて、ホルムアルデヒドの発生を常時監視する小型装置を試作。片方のLEDのみセンサー材料につながっており、センサーがホルムアルデヒドに曝されると導電性が上がり、片方のLEDのみ輝度が増加する。2つのLEDの輝度を比べることで、0.9ppmのホルムアルデヒド濃度を検知することができたという。
今回開発したセンサー材料は、スマートフォンなどの汎用電子機器へ容易に組み込むことができる。センサーと情報通信技術を融合することで、ホルムアルデヒドガスの発生を遠隔からリアルタイムで検知するなど、安全・安心な社会の構築に貢献できるもの、と研究グループは期待を寄せている。
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・物質・材料研究機構 プレスリリース