日本でも罹患率が増加している前立腺がん
北海道大学は10月13日、前立腺がん細胞の増殖を制御する細胞内タンパク質であるSignal-transducing adaptor protein-2(STAP-2)を同定したと発表した。この研究は、同大大学院薬学研究院の松田正教授らの研究グループによるもの。この研究は、生物学分野の国際誌「The Journal of Biological Chemistry」でオンライン公開されている。
画像はリリースより
前立腺がんは、50歳代から急速に増え始める高齢の男性にみられるがんで、加齢による男性ホルモンのバランスの崩れや、前立腺の慢性的炎症、食生活や生活習慣などの要因が加わって発生するといわれている。前立腺がんは、初期には自覚症状がないことがほとんどだ。がんが膀胱や尿道を圧迫し、排尿に関する自覚症状が出た段階でがんが発見された場合には、かなり進行しており、多くはすでにがん細胞が骨やリンパ節に転移し、悪性化している。
また、欧米人に発生率の高いがんで、米国では男性の約20%が生涯に前立腺がんと診断される。しかし、日本でも食生活の欧米化によって罹患率は急増しており、近い将来男性がん死亡者の上位となることが予想されている。
STAP-2がEGFRのタンパク質量を調節
今回、研究グループは、前立腺がん細胞の増殖を制御する細胞内タンパク質としてSignal-transducing adaptor protein-2(STAP-2)を同定。STAP-2は、前立腺がん細胞表面のがん細胞増殖のスイッチの役割を果たす上皮成長因子受容体「EGFR」のタンパク質量を調節し、前立腺がん細胞の増殖を誘導することが判明したという。これにより、STAP-2タンパク質によるEGFRタンパク質量の調節メカニズムを詳細に解明できれば、前立腺がん細胞増殖を制御する新しい抗がん剤開発に繋がることが示唆された。
研究グループは、今回同定されたSTAP-2は前立腺がん患者のための新しい抗がん剤開発の重要な標的であり、また、STAP-2やEGFRを標的とした分子標的治療薬は、既存の抗がん薬との併用により前立腺がん治療の有力な武器になりえる、と述べている。
▼関連リンク
・北海道大学 プレスリリース