一般住民より寿命が10~20年短い統合失調症
岡山大学は9月6日、統合失調症患者のがん検診受診率が極めて低いことを明らかにしたと発表した。この研究は、同大学大学院医歯薬学総合研究科精神神経病態学の藤原雅樹医員らと、岡山県精神科医療センターの児玉匡史部長ら、東北大学の中谷直樹准教授、国立がん研究センターの内富庸介部門長らによる共同研究グループによるもの。研究成果は、学会誌「Psychiatry and Clinical Neurosciences」に掲載された。
画像はリリースより
統合失調症は、約100人に1人が発症する頻度の高い病気。一般住民よりも早期死亡率が高く、寿命が10~20年短いという健康上の格差が問題となっている。
一方、がんは、主要な死因のひとつだが、統合失調症ではさらに一般住民よりもがん死亡率が高いことが報告されている。海外では、統合失調症患者のがん検診受診率は、一般住民と比較して低いことが知られており、公衆衛生上の課題として認識されているが、日本では、統合失調症患者のがん検診受診率は不明のままだった。
がん検診受診率、岡山市一般住民の約2分の1
研究グループは、岡山県精神科医療センターへ1年以上通院している20~69歳の統合失調症患者を対象に、健康に関する質問紙調査を実施。適格基準を満たし、調査対象として選ばれた420人のうち、350人(83.3%)が調査に回答した。この調査では、がん検診受診対象年齢の患者に対して平成27年度の大腸・胃・肺がん検診受診の有無、平成26~27年度の乳・子宮頸がん検診受診の有無を尋ねたという。
調査の結果、年齢調整後の受診率は、大腸がん25.1%、胃がん20.6%、肺がん31.1%、乳がん25.6%、子宮頸がん20.0%だったという。これは、参考となる平成25年度の国民生活基礎調査のデータから算出した岡山市一般住民のがん検診受診率の約2分の1の受診率であることが判明。また、統合失調症の重症度/機能障害度が重いほど、がん検診を受診していないことも明らかになったという。
統合失調症患者を対象としたがん検診受診の勧奨や受診支援等の強化が急がれる、と研究グループは述べている。
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・岡山大学 プレスリリース