軽症から重篤な症状まで多くの症状を伴う花粉食物アレルギー症候群
北海道大学は8月23日、西洋ヒノキ(イトスギ)花粉症とモモや柑橘類に対する食物アレルギーの共通原因物質が、防御ペプチドファミリーであることを世界で初めて解明したと発表した。この研究は、同大大学院先端生命科学研究院・国際連携研究教育局の相沢智康准教授と、フランスパスツール研究所のPascal Poncet博士を中心とした国際共同グループによるもの。研究成果は米国アレルギー学会の「Journal of Allergy and Clinical Immunology(JACI)」に掲載された。
花粉症患者には、花粉だけではなく特定の果物や野菜に対してもアレルギー症状を示す場合があり、花粉食物アレルギー症候群と呼ばれている。この原因は、花粉アレルゲンと植物性食物アレルゲンに共通する抗原分子による交差反応と考えられており、口腔内にかゆみを伴う程度の軽症から、喘息やアナフィラキシーなどの重篤なものまで多くの症状を伴う。シラカンバ花粉症患者のリンゴやモモに対するアレルギー等が有名だが、その発症機構には明らかになっていない点も多くある。
新たな花粉症治療薬の開発に期待
研究グループは、酵母を用いた遺伝子組換え技術による植物由来ペプチド抗原の人工的な生産に成功。ヨーロッパの花粉食物アレルギー症候群患者の血清に対する反応の解析を行った。その結果、世界中で公園樹や造園樹に広く用いられる西洋ヒノキの花粉に含まれるペプチドが、モモや柑橘類に対する花粉食物アレルギーの原因抗原のひとつだと判明。さらに、このペプチド抗原は、植物の防御タンパク質のひとつとして植物界全体に広く存在することから、さまざまな植物関連アレルギーの原因物質となっている可能性も示唆されたという。
現在、花粉症治療薬の開発ではペプチド抗原の作用は考慮されておらず、今回の発見が新たな治療薬の開発につながる可能性があるという。また、今回のペプチドが植物界に広く存在することから、新たなアレルゲンの発見と治療法の開発につながる可能性も期待される、と研究グループは述べている。
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・北海道大学 プレスリリース