■「日本でも死亡事件あり得る」
ジェネリック医薬品(GE薬)メーカーによるジェネリック抗癌剤の開発が加速する中、臨床試験受託事業協会の熊谷雄治会長(北里大学病院臨床試験センター長)は、治験に参加する被験者の多試験重複参加をめぐる問題について、「被験者の安全性を守るという意識が日本全体で薄れてきている」と危機感を募らせる。特にジェネリック抗癌剤の生物学的同等性試験(BE試験)では、二重登録のデータ照合作業が行われていないのが現状で、水面下において健康被害が発生しているのではないかと懸念されている。負担軽減費を得る目的で参加する被験者も存在する中、大半の医療機関では被験者の二重登録を防止する手立てが取られておらず、“被験者の安全性は守られて当然”という安全神話は崩壊してきている。熊谷氏は、仏レンヌの医療機関で実施されたファースト・イン・ヒューマン試験(FIH試験)で健康成人ボランティアが死亡した“レンヌ事件”に言及し、「日本でも起こる可能性は十分あり得る。国全体で被験者の二重登録を回避する仕組みを整えるべき」と警鐘を鳴らす。
臨床試験における被験者の多重登録は、安全性の評価やその効果が認められていない化合物をヒトに投与する治験の特性から不測の事態が起こる可能性や、薬物相互作用が確認されていない複数の薬剤を同時期に服用することによる安全性リスクが指摘されている。