血球貪食を引き起こす受容体分子の同定にも成功
金沢大学は7月27日、マクロファージによる血球の貪食を誘発する炎症性刺激を明らかにし、これらの炎症性刺激によって、マクロファージの細胞表面に発現が誘導され、血球の貪食を引き起こす受容体分子の同定にも成功したことを発表した。この研究は、同大医薬保健研究域医学系の華山力成教授らの研究グループによるもの。研究成果は総合医学誌「EBioMedicine」に掲載された。
画像はリリースより
血球貪食症候群の発症原因として、炎症性サイトカインの異常上昇が重要だと知られている。しかし、炎症性サイトカインのどのような作用により、マクロファージが生きた自己血球を貪食するようになるのか、その分子メカニズムはよくわかっていない。その理由のひとつとして、これまでの血球貪食の研究では、主にマウスモデルを用いた解析が行われており、網羅的かつ効率的に分子機序の探索を行うことができなかったことが考えられるという。
同定分子阻害剤を用いた新たな治療法開発に期待
研究グループは、マウスの骨髄由来マクロファージに、さまざまな炎症性刺激を与えた後、生きた血球と共培養することで貪食が誘発される刺激の探索を行った。その結果、インターフェロン-ガンマ、細菌のDNA、抗インターロイキン-10受容体抗体の三種混合刺激によって、マクロファージの細胞表面にさまざまな受容体分子の発現が誘導され、生きた血球の貪食が引き起こされることがわかったという。中でも、ICAM1やVCAM1などの接着分子の発現によって、リンパ球や骨髄細胞がマクロファージにつなぎ止められ、血球貪食が引き起こされることが判明した。さらに、血球がマクロファージに取り込まれるためには、Rac1低分子量Gタンパク質の活性化が必須であることも明らかにしたという。
今後、研究グループは、この実験系を用いてマクロファージに発現誘導される貪食受容体を網羅的に同定し、血球貪食の分子機構の全容を解明することを目指すという。さらに、同定分子の阻害剤を用いた新たな治療法の開発が期待される、としている。
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