緩和ケア病棟で亡くなった患者の遺族458名が解析対象
筑波大学は8月4日、緩和ケア病棟で最期を迎えた進行がん患者の家族が経験した家族内の葛藤の実態について検証し、その結果を発表した。この研究は、同大学医学医療系の浜野淳講師と、東北大学の宮下光令教授らの研究グループによるもの。研究成果は、米精神腫瘍学会・英精神腫瘍学会・国際精神腫瘍学会の論文誌「Psycho-Oncology」オンライン版に掲載された。
同研究の対象者は、NPO法人日本ホスピス緩和ケア協会に加盟している国内71医療機関の緩和ケア病棟で、2016年1月31日以前に亡くなった患者の遺族767名。そのうち458名が解析対象となった。調査は、2016年5月から7月にかけて行われた。
「OFC scale 8項目」を用いて家族内葛藤を評価
同研究では、End of lifeで家族が経験する葛藤を評価するための8項目からなる評価スケール「Outcome-Family Conflict scale」(OFC scale、8項目)を用いて、家族内葛藤を評価。その結果、本来果たすべき役割を十分にしていない家族がいると思うことがあった、患者の治療方針に関することで意見が合わないことがあった、については、「とても良くあった」「よくあった」「時々あった」と回答した遺族が20%以上だった。そして、42.2%の遺族が、OFC scale 8項目のうち少なくとも1項目で「とても良くあった」「よくあった」「時々あった」と回答したという。
さらに、遺族の年齢が若い場合、家族内で意見を強く主張する人がいる場合、病気後に家族内でのコミュニケーションが十分に取れていない場合に、家族内の葛藤が増えることが判明した。また、病気前に交流がなかった家族と連絡をとるようになった場合は、家族内の葛藤が減ることが明らかになったという。
今回の研究では、患者が亡くなった後に家族の記憶を頼りに回答している点や、病気になる前の家族内の関係性やコミュニケーションの状況が評価できていない点、国内での調査のため国や文化による違いが評価できていない点などで限界があるとしている。そのうえで、患者家族に対して、葛藤を感じることは決して稀なことではないと伝えることに活用できるだけでなく、医療従事者への教育活動にも活用できると考えられる、と研究グループは述べている。
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