ナルディライジン欠損マウスは関節炎が軽く
京都大学は7月11日、関節リウマチ患者の関節液中でタンパク質「ナルディライジン」が増加し、これを欠損させたマウスでは関節リウマチ様関節炎が軽くなることを発見したと発表した。この研究は、同大医学研究科の伊藤宣准教授ら、滋賀医科大学の西英一郎教授らの研究グループによるもの。研究成果は英学術誌「RMD Open」に掲載された。
画像はリリースより
これまでの研究により、ナルディライジンがTNF-αの分泌に関与することは明らかになっていたが、TNF-αが関与する病気のひとつである関節リウマチでの役割はわかっていなかった。また、関節リウマチかどうか診断する際の指標となる物質も明らかになっていない。
関節リウマチの早期診断・新たな治療薬の開発に期待
研究グループは、京都大学医学部附属病院で関節手術を行った変形性関節症患者17名と関節リウマチ患者20名、計37名の関節液を解析。その結果、関節リウマチ患者の関節液には、非常に多くのナルディライジンが含まれていることが判明した。一方、変形性関節症患者の関節液にはほとんど含まれていないこともわかったという。
さらに、ナルディライジンを欠損させたマウスに関節リウマチ様関節炎を発症させたところ、関節炎が弱くなり、その細胞からはTNF-αの分泌が少なくなることが判明した。さらに、ナルディライジンを阻害する薬を関節内に注射すると、関節炎が弱くなることが明らかになったという。
今回の研究成果は、ナルディライジンを指標にした関節リウマチの早期診断や新たな治療薬の開発につながる可能性がある。研究グループは、「関節リウマチは診断や治療にたくさんの課題が残されており、今回の研究成果が少しでも課題の解決につながればと考えています。今後も研究を継続し、成果をご報告したいと思います」と述べている。
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・京都大学 研究成果