絶対リスクの算出方法は吹田スタディを採用
一般社団法人日本動脈硬化学会は6月30日、「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版」を発刊した。これを受けて同学会は同日会見を行い、木下誠副理事長が2012年版からの改訂ポイントについて語った。
今回の改訂点は、大きく以下の6点。
- Clinical Question(CQ)とSystematic Review(SR)の導入
- 絶対リスクの算出方法の変更
- 高リスク状態の追加
- 二次予防における高リスク状態での厳格なLDL-C管理
- 家族性高コレステロール血症(FH)の記載の拡充
- エビデンスレベルと推奨レベルの更新
危険因子の評価における脂質異常症、動脈硬化性疾患の絶対リスクと管理目標値、生活習慣の改善における食事療法・薬物療法の項目でCQを設定しSRを実施した。
リスクの算出は、前回の改訂から追加している。リスク評価は絶対リスクで行うことを継続し、アウトカムを死亡ではなく冠動脈疾患の発症に、LDL-CやHDL-Cの情報を反映させるために吹田スタディを採用した。
新たに、「高尿酸血症」「睡眠時無呼吸症候群」を考慮すべき病態として追加した。
家族性高コレステロール血症や急性冠症候群、およびハイリスク病態を合併した糖尿病は、現在のLDL-C<100mg/dlよりさらにLDL-C<70mg/dlに管理するように提言した。
新薬の登場、小児FHへのスタチン適応拡大などに伴い、FHの診断・治療の記載を詳細におこなった。
エビデンスレベルは、日本国内のエビデンスが主で、少ないものは諸外国の重要なものを使用したという。
冠動脈疾患発症予測・脂質管理目標値設定アプリを公開
日本動脈硬化学会 木下誠副理事長
5年ぶりの改訂となった今回は、絶対リスクの算出方法の変更に伴い、医療従事者向けの冠動脈疾患発症予測・脂質管理目標値設定アプリを、日本動脈硬化学会のウェブサイト上で公開した。
前回2012年版の絶対リスクの算出方法では、コホート研究「NIPPONDATE80」を使用。「NIPPONDATE80は、スタチンが使われはじめた頃のデータで、コレステロールのリスクをしっかり見られるという利点があった。一方で、HDL-Cのデータがなく、リスクを脳血管疾患・心疾患の死亡で評価していた。そのため、日本人の冠動脈疾患の発症を見ている吹田研究を今回の評価ツールとして使用している」と木下氏。
吹田スコアを用いた冠動脈疾患の発症リスクの算出は、年齢・性別・喫煙・血圧・HDL-C・LDL-C・耐糖能異常・早発性冠動脈疾患家族歴の8項目から点数を合計し、低リスク・中リスク・高リスクに区分分けする。アプリでは、この8項目のデータを指示に従い入力することで、10年以内の冠動脈疾患の発症確率と、同年齢・同性で最もリスクが低い人と比べて何ポイント発症確率が高いか表示される。また、脂質管理目標値も示される。
「発症リスクをスコア化することで、どの項目をどのように改善するべきかが明確になった。スコアの結果を元に、医師と患者が知識を共有しながら治療できるようになる」と同学会は述べている。
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・一般社団法人日本動脈硬化学会 ウェブサイト