炎症性疾患・自己免疫疾患を対象とする臨床試験を実施中のJAK阻害剤
米国のイーライリリー・アンド・カンパニーは6月16日、「Olumiant(R)」(一般名:バリシチニブ)の8つの臨床試験結果の新たな併合解析データを発表した。このデータは、欧州リウマチ学会議(EULAR)2017年次総会において、口頭および2つのポスターにより発表された。
バリシチニブは、1日1回経口投与のJAK阻害剤。現在、炎症性疾患および自己免疫疾患を対象とする臨床試験が行われている。同剤は、2016年に米国、EU、日本の規制当局に対して、関節リウマチを適応とした販売承認申請が行われ、2017年2月にEUで承認されている。
重篤な感染症の発現率は同等、有効性の維持と有益性が示される
4つの第3相臨床試験、3つの第2相臨床試験、1つの第1相臨床試験からなる完了した8つのバリシチニブの臨床試験と、長期継続試験から得たデータの併合解析により、バリシチニブ投与群とプラセボ投与群で、重篤な感染症の発現率は同等であったことが示されたという。治療開始からの24週間、6つの臨床試験において、バリシチニブ(4mg)投与群とプラセボ投与群の重篤な感染症の発現率は、100人年ごとにそれぞれ3.8および4.2。また、一連の4つの臨床試験では、100人年ごとの重篤な感染症の発現率は、プラセボ投与群では5.1であったのに対し、バリシチニブ2mg投与群と4mg投与群ではそれぞれ4.2および5.7だった。また、副腎皮質ステロイドの併用、生物学的製剤の使用歴、正常範囲外のBMI(体格指数)、アジア地域からの参加および加齢が、重篤な感染症の主な危険因子であることも確認されたという。
中等度から重度の活動性関節リウマチ患者を対象とするバリシチニブの長期継続試験に関する2つの発表からは、2年の治療期間にわたるバリシチニブの有効性の維持と長期にわたる有益性が示された。1つ目の解析結果によると、バリシチニブ投与開始後2年時の関節の構造的破壊の進行をvan der Heijde modified total sharp score(mTSS)で評価したところ、バリシチニブ投与群では、最初にプラセボまたはメトトレキサートを投与してからバリシチニブ投与に切り替えた群と比較して、2年にわたり、有意に進行が抑制されていた。2年間の長期継続試験の2つ目の解析結果では、最長3年間バリシチニブによる治療を受けた患者において、各試験においてさまざまな治療群で24週時に得られた低疾患活動性を達成した患者の割合は、3年にわたり維持または増加した。また、ほとんどの患者は、長期継続試験への登録前に治療への反応を示し、継続試験の2年間、その反応を維持したことが示されたとしている。
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・日本イーライリリー株式会社 プレスリリース