1986~2015年に出生し、研究条件を満たした348例を検討
久留米大学は6月1日、小児のC型肝炎ウイルス(HCV)感染に関する大規模な疫学研究を行い、日本における小児HCV感染の疫学的特徴を明らかにしたと発表した。この研究は、同大医学部小児科学講座の水落建輝助教を中心とする研究グループによるもの。研究成果は「Journal of Gastroenterology」オンライン版に5月31日付けで掲載されている。
調査の対象は、2012~2016年に全国の小児施設で登録された抗FCV抗体陽性症例。1986~2015年出生、17歳未満で診断、Follow-up期間1年以上、HIVとHBVの併存感染なし、の条件を満たす348例を抽出した。1986~1995年、1996~2005年、2006~2015年と出生年ごとに3群に分け、診断時年齢、最終受診時診断、治療、感染経路、ゲノタイプなどを比較検討。また、肝生検が実施されていた147例に関しては、肝組織像を詳細に検討したという。
2006~2015年には母子感染が99%以上に
その結果、診断時は3.1歳、最終受診時は10.9歳で、近年、診断年齢は有意に低下していることが明らかになった。最終受診時の臨床診断では、自然消失9%、キャリア34%、慢性肝炎4%、SVR40%、治療中5%、不明8%、肝硬変/肝がん0%で、治療は54%に実施されていた。感染経路は母子90%、水平1%、輸血5%、不明4%で、近年、母子感染の実数は増加していなかったが、感染経路全体に占める割合は増加し、2006~2015年は99%に達していたという。
Genotypeは1型が42%、2型が57%、3型が1%と小児では2型が最多で、近年、1型が有意に減少し、2型が増加している傾向だった。147例に肝生検が行われ、初回実施時の年齢は8.9歳、感染経路は母子86%、輸血7%であった。肝組織の線維化は、F0が33%、F1が58%、F2が9%で、F3-4はなかった。
これまで小児HCV感染に関する国内における大規模な疫学研究はなく、今回の研究成果は小児HCV感染の疫学的特徴を明らかにしたもの。近年の傾向は、より低年齢で診断され、母子感染が99%以上になり、Genotype 2型が最多になっていた。欧米では1~2%に認められる肝硬変は見られず、大部分の症例は肝組織で線維化がないか、軽度であったとしている。
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・日本医療研究開発機構 プレスリリース