NSAID長期服用と副作用
大阪市立大学の研究グループは薬剤性小腸傷害が発症する原因を解明した。
非ステロイド性抗炎症(NSAID)は感冒患者の解熱、変形性関節症・関節リウマチなどの骨関節疾患患者の鎮痛に使用する。その一つ、低用量アスピリンは心筋梗塞、脳梗塞の予防に処方され、国内のNSAID推定服用者は100万になる。一方で、長期服用には副作用があり、潰瘍、びらんなど胃腸障害は最も深刻、重症例は出血、穿孔から死に至る。米国での消化管障害は年間10万人以上が入院、1万6500人が死亡。英国では年間2500人が死亡と推定される。
NSAID起因性小腸傷害
NSAID起因性消化管傷害は胃、十二指腸などの上部消化管に発症するとされていたが、カプセル内視鏡で観察すると小腸でも高頻度に発症していた。NSAID起因性小腸傷害に対する保険適用薬がないため、やむを得ないNSAIDの中断で疼痛の増強、血栓症の誘発などの問題が起きている。
炎症性サイトカイン
近年、関節リウマチの発症や進行に炎症性サイトカインの腫瘍壊死因子(TNF-α)の関与がわかり、TNF阻害薬の投与で関節炎を寛解できるようになった。研究グループはすでにNSAID起因性小腸傷害の発症にTNF-αが関与する可能性をマウス実験でつきとめていた。
今回、NSAIDを長期間服用する関節リウマチ患者でもTNF阻害剤の投与で小腸傷害が軽度になるのではと考えた。投与の有無による重症小腸傷害の発生頻度を比較した結果、投与で発症リスクが約1/4に低下した。NSAIDによる小腸傷害を炎症性サイトカインのTNF-αが引き起こしていることが明らかになった。
今後は既存のTNF阻害薬の有効性が検証されるが、有効性が確認されても高価な薬剤である点から、TNF-αを標的とした創薬が期待される。(馬野鈴草)
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