「健康型」「欧米型」「伝統型」の食事パターンを調査
国立がん研究センターは5月24日、日本人の男女約8万人を追跡した調査結果にもとづいて、食事パターンと死亡リスクとの関連を調べた結果を発表した。この研究は、国立がん研究センターの予防研究グループらによるもの。研究成果は「PLoS One」オンライン版に4月26日付けで先行公開されている。
画像はリリースより
今回の研究は、1990年と1993年に岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田の10保健所(呼称は2016年現在)管内に在住の40~69歳の人々のうち、研究開始から5年後に行った食事調査票に回答した男女約8万人を2012年まで追跡した調査結果にもとづくもの。
研究開始から5年後に行った食事調査票の結果から、134項目の食品・飲料の摂取量により、野菜や果物、いも類、大豆製品、きのこ類、海そう類、脂の多い魚、緑茶などが関連した「健康型」、肉類・加工肉、パン、果物ジュース、コーヒー、ソフトドリンク、マヨネーズ、乳製品などが関連した「欧米型」、ご飯、みそ汁、漬け物、魚介類、果物などが関連した「伝統型」の3つの食事パターンを抽出した。
欧米型食事パターンは、がん死亡のリスク低下とも関連が
5年後調査時の3つの食事パターンについて、各対象者におけるパターンのスコアにより4つのグループに分類し、その後約14.8年の追跡期間中に発生した全死亡、がん死亡、循環器疾患死亡、心疾患死亡、脳血管疾患死亡との関連を調査した。その結果、健康型食事パターンのスコアが高い群では低い群に比べ、全死亡のリスクは約2割、循環器疾患死亡のリスクは約3割低下していた。さらに、欧米型食事パターンにおいて、そのスコアが高いほど全死亡、がん死亡、循環器疾患死亡のリスクが低下する傾向が見られ、伝統型食事パターンと死亡リスクとの関連はみられなかった。
今回の研究では、野菜や果物、いも類、大豆製品、きのこ類、海そう類、脂の多い魚、緑茶などが関連した健康型食事パターンは、全死亡および循環器疾患死亡のリスクが低下するという結果が得られた。この食事パターンのスコアが高い群では、多価不飽和脂肪酸やマグネシウムやカリウムなどのミネラルの摂取が多いことがその理由として挙げられている。これらの栄養素は、循環器疾患のリスク低下に関連することが報告されており、食事パターンとして総合的にみることで、これらの栄養素の相乗効果も期待できるという。
肉類・加工肉、パン、果物ジュース、コーヒー、ソフトドリンク、マヨネーズ、乳製品などが関連した欧米型食事パターンは、全死亡および循環器疾患死亡のリスク低下と関連。肉類・加工肉は、全死亡のリスク上昇との関連が報告されているが、日本人は欧米人に比べ肉類の摂取量が少ないことや、欧米型食事パターンに関連した他の食品(コーヒーや牛乳・乳製品など)の好ましい効果によって、全死亡および循環器疾患死亡のリスクが低下したと考えられるという。また、この食事パターンのスコアが高い群では、塩分摂取が少なく、これも循環器疾患死亡のリスクが低下した理由のひとつとしている。欧米型食事パターンは、がん死亡のリスク低下とも関連していたが、がんの部位によって関連する栄養・食事因子が異なるため、さらなる研究が必要、と研究グループは述べている。
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