新規汎クラスIホスファチジルイノシトール3キナーゼ阻害薬
ドイツのバイエル社は5月17日、三次治療以降の再発または治療抵抗性の濾胞性リンパ腫(FL)の治療薬としてのコパンリシブ塩酸塩水和物(一般名:コパンリシブ)の新薬承認申請を、米国食品医薬局(FDA)が優先審査品目に指定したことを発表した。
コパンリシブは、バイエル社が開発した新規の汎クラスIホスファチジルイノシトール3キナーゼ(PI3K)阻害薬。PI3K-αおよびPI3K-δのアイソフォームのいずれに対しても強力な阻害活性を有する。PI3K経路は、細胞の増殖、生存および代謝に関与しており、その制御異常は非ホジキンリンパ腫(NHL)において重要な役割を果たしている。
NHLは、最もよくみられる血液がんであり、2012年に全世界で新たに診断された患者数は約38 万6,000人とされ、毎年20万人近くが死亡している。NHLには低悪性度または予後不良な中・高悪性度の病型の疾患群が含まれ、FLは低悪性度NHL(iNHL)の中で最もよくみられる病型である。
iNHL被験者において客観的奏効割合59.2%
今回の承認申請は、再発または治療抵抗性のFLを含むiNHLを対象とした非盲検、単一群の第2相臨床試験「CHRONOS-1試験」のデータに基づくもの。142人の全解析対象集団のうち 141人がiNHLだった。解析時点で、治療期間の中央値は22週間で、46人が治療を継続中。客観的奏効割合(ORR)は全患者集団で59.2%、完全奏効割合(CR)は12%、奏効期間(DOR)の中央値は98週(687日)以上だった。FLの部分集団(n=104)において、コパンリシブによる治療により、ORRは58.7%(CR:14.4%を含む)、DORの中央値は52週以上。安全性および忍容性は、これまでに発表されたコパンリシブのデータと一致しているという。
最も多い有害事象は、一過性の高血糖(全グレードは49%、グレード3以上は40%、グレード4を超えるものはなし)、および高血圧(全グレードは29%、グレード3は23%、グレード3を超えるものはなし)だった。これらのデータは、米国癌研究会議(AACR)の2017年年次総会で発表され、CHRONOS-1試験のFLの部分集団のデータは、6月に開催される米国臨床腫瘍学会(ASCO)の2017年年次総会で発表されるという。
バイエル社はFLに対するコパンリシブについて、FDAが管理する連邦規則に基づく迅速承認を求めている。同剤は、FDAよりFLに対するファスト・トラック指定と希少疾病用医薬品指定を取得している。また、辺縁帯リンパ腫(MZL)においても脾臓、節性、および節外性の病型を対象として、希少疾病用医薬品指定を受けている。
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・バイエル薬品株式会社 プレスリリース