日本遺伝カウンセリング学会学術集会シンポジウム
現在臨床実験が行われている、母体血を使用した胎児DNA検査の現状が明らかとなった。日本遺伝カウンセリング学会学術集会シンポジウム「出生前診断新時代を迎えて」にて、昭和大病院産婦人科教授の関沢明彦氏が発表を行った。
この検査では、胎児の染色体異常を対象としている。母体血中に含まれている胎児DNAを測定することによって、染色体異常の有無を判断することができる。関沢氏は、「1ヶ月だけで441件の実施があり、これまでに1000件以上の検査が実施されていると予想されている」と話す。
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母体血を用いた胎児DNA検査
今回の検査は、「NIPTコンソーシアム」の施設条件を満たしている医療機関で行われている。NIPTコンソーシアムでは、母体血胎児DNA検査の実施するために、適切な遺伝カウンセリングの構築を目指して設置されたものであり、現在は全国で21施設が登録している。「コンソーシアムに参加する医療機関は増えているため、今後、50施設近くになる可能性が高い」と、関沢氏は予想している。
今の時点では、母体血を用いた胎児DNA検査の対象は、羊水検査の対象となるような妊婦だけに限定されている。結果が明らかだった257件では染色体異常が指摘されており、精査のため羊水検査が必要とされたのは3.5%であった。反対に染色体異常が認められなかったのは248件であった。そのため多くの不要な羊水検査が回避されたこととなる。
その一方で、同じシンポジウムで演者となった、日本ダウン症協会理事長の玉井邦夫氏は、「出生前検査の対象となるほどダウン症は重篤な疾患なのだろうか。親が安心するために出生前検査が実施されているのだが、構造異常が回避できれば親は安心して子育てができるのだろうか」という疑問について述べた。 玉井氏は、「遺伝カウンセリングの際にダウン症への理解が進むように、ピアカウンセリングに協力したい」との考えも示している。(福田絵美子)
▼外部リンク
日本遺伝カウンセリング学会学術集会
http://www.congre.co.jp/jsgc37/contents/greeting.html