卵巣の働きが良好でないと、不妊に至るケースも
九州大学は5月11日、同大学の研究グループが発見した分子「Phospholipase C Related but Catalytically Inactive Protein」(PRIP)が卵巣における卵胞成熟過程に作用することを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院歯学研究院口腔細胞工学分野の松田美穂講師と平田雅人主幹教授(現名誉教授・ 福岡歯科大学客員教授)らによるもの。研究の成果は、国際学術誌「The Journal of Biological Chemistry」のオンライン速報版にて公開された。
画像はリリースより
生殖は、生物が存続する上で最も重要な機構であり、複数の器官が連携して複雑で精緻なシステムを構築している。そのなかで、卵巣は性周期を司る重要な組織であり、ホルモン分泌などを通して周期的に卵子(卵胞)を受精可能な状態に成熟させ排卵している。しかし、卵巣の働きが良好でないと、卵子の未成熟、排卵障害、生理周期異常などを引き起こし、不妊に至るケースもあるとされる。
アンチエイジングの手がかりとしても期待
研究グループは、PRIPを持たないマウスは、性周期が乱れ排卵数が減少していたことを発見。さらにこのマウスの卵巣では、卵胞の成熟が進んでいないために成熟した卵子の数が少なく、排卵数が少なくなっていることがわかったという。つまり、卵子の成熟には PRIPが必要であるということが明らかとなった。このマウスは、人の不妊症の原因のひとつである多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)に似た特徴を示していたこともわかったとしている。
今回の研究での知見は、未だ不明な点が多い生殖機構の基盤研究に進展をもたらすとともに、妊娠・出産を妨げる疾患の病因・病態の解明につながることが期待される。また、卵巣機能が良好であり続ければ、老化を遅らせることにも寄与するため、アンチエイジングへの手がかりのひとつとなる可能性があると同研究グループは述べている。
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