日本人10万人を対象とした多目的コホート研究結果
国立がん研究センターは4月14日、喫煙と白血病罹患との関連を調べた多目的コホート研究の結果を発表した。研究成果は「Journal of Epidemiology」に4月8日付で掲載されている。
画像はリリースより
国際がん研究機関(IARC)は、喫煙を急性骨髄白血病の確実なリスクであると報告しているが、日本人を対象とする喫煙と白血病罹患リスクとの関係を検証した大規模な研究はほとんど行われていない。白血病は、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ性白血病(CLL)に大きく分類される。近年の分類では、CLLは悪性リンパ腫の一種として考えられるようになっている。今回の研究では、喫煙とAML、ALL、CML罹患リスクとの関連を検討した。
対象となったのは、平成2年(1990年)と平成5年(1993年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田の10保健所(呼称は2013年現在)管内に住む40~69歳の男女約10万人の人々を平成24年(2012年)まで追跡した。
喫煙指数30以上のグループで有意にAMLのリスクが上昇
調査開始時のアンケート調査では、喫煙習慣の項目についての回答を基にして、たばこを「吸わない」グループ、「やめた」グループ、「吸っている」グループの3つのグループに分けた。さらに、たばこを「吸っている」グループを喫煙指数(パックイヤー:たばこ1箱を20本として、1日当たりの喫煙箱数と喫煙年数を掛けあわせた値)によって2つのグループに分類し、「吸わない」グループ、「やめた」グループと合わせて、4グループとした。追跡期間は平均約18年で、期間中にAML90人、ALL19人、CML28人の発症を確認した。これを年齢、居住地域、性別、職業と肥満指数の偏りが結果に影響しないように考慮して、喫煙との関連を検討した。
その結果、男性では、喫煙指数が30未満のたばこを「吸っている」グループは、たばこを「吸わない」グループと比べてAMLのリスクは上昇していなかったが、喫煙指数が30以上のたばこを「吸っている」グループは、AMLのリスクがたばこを「吸わない」グループと比べて2.2倍であり、統計学的に有意にAMLのリスクが上昇していた。女性におけるAMLやCML、ALLについては、喫煙者や罹患した人の人数が少なく、はっきりしなかったという。
AMLは、他のがんに比べると頻度は低いが、発生すると治療が難しい病気のひとつ。タバコに含まれるベンゼンや放射性物質による発がんを背景に、喫煙がAMLのリスクを上昇させることが海外の研究で示されている。今回の研究結果から、これまでの国際的評価は日本人にもあてはまり、喫煙がAMLのリスクの上昇にも関連していることが明らかとなった。喫煙は多くのがんや循環器・呼吸器疾患などのリスクであり、健康寿命延伸のためにも、AMLの予防においても禁煙は重要、と研究グループは述べている。
▼関連リンク
・国立がん研究センター 現在までの成果