癌の予防では、癌のリスクに患者が曝されることを減らす一次予防に重点を置いた。禁煙や受動喫煙防止対策の徹底、受診勧奨や普及啓発を通じて肝炎の早期発見・早期治療につなげて肝癌発症を予防するなどの感染症対策を促すことで、癌の罹患者や死亡者の減少を目指す。二次予防に向けた癌検診については、受診率向上のため薬局薬剤師を通じた受診勧奨を進めると共に、職域での癌検診の受診率を全ての癌種で50%とすることを目標に打ち出した。
癌医療の充実については、ゲノム医療を重点分野に位置づけ、患者一人ひとりの遺伝子に適した医療を提供するゲノム医療に関する具体的な計画の策定を国に求めた。基本計画に基づき、高度な機能を持つ医療機関の整備や、国内のどこにいてもゲノム医療が受けられる体制を段階的に構築すること、拠点病院を通じて得たゲノム情報に基づく適切な診療の提供や革新的な治療を開発するため、質の高いデータベースやバイオバンクの整備を行うとした。
薬物療法の充実に向けては、外来薬物療法をより安全に提供するため、適切な薬剤の服用管理や副作用対策を含め、拠点病院などの医療機関の薬剤師とかかりつけ薬剤師をはじめとする薬局の薬剤師の連携体制を整備するとした。
また、希少癌や難治性癌対策も重点分野に位置づけた。希少癌に対しては、患者や家族の積極的な参加が得られるよう学会や患者団体の連携を強化し、基礎から臨床まで一貫した研究を推進するとした。難治性癌については、研究結果が臨床現場におけるエビデンスに基づいた標準的治療の確立や医療の提供へつながるようなネットワーク体制を整備するとし、中核的な役割を担う希少癌対策を統括する体制を2年以内に国が整備するとした。
3本目の柱である癌との共生に関しては、緩和ケアの推進を重点分野とし、患者の身体的・精神的苦痛を緩和することでQOLを向上させる緩和ケアを推進する体制の整備を国と都道府県に求めた。さらに、拠点病院は癌疼痛をはじめとした苦痛のスクリーニングを診断時から行い、苦痛を定期的に確認し、迅速に対処するなど、癌診療に緩和ケアを組み入れた体制整備を強化するほか、専門的な緩和ケアの質向上のため、癌専門薬剤師や緩和薬物療法認定薬剤師などの適正配置や緩和ケアチーム育成のあり方を検討するとした。