2008年に行われた「PACIFIC」との比較も
サノフィ株式会社は4月4日、日本人の急性冠症候群(ACS)患者2,010例を対象にした、脂質リスクとコントロールに関する前向き観察研究「EXPLORE-J」のベースラインデータを発表した。同研究は2018年に完了予定。
東邦大学医療センター大橋病院
循環器内科教授 中村正人氏
「EXPLORE-J」は国内のACS患者における、現在の脂質管理および家族性高コレステロール血症(FH)有病率を探索し、明らかにする大規模なACSレジストリー。同試験をとおして、ACS患者の実臨床下での脂質管理状況や、FH有病率だけでなく、2008年に行われた国内初の大規模疫学調査「PACIFIC」との比較も明らかになる。
FHは、国内に約30万人の患者がいると推定される。成人(15歳以上)の診断基準は、(1)未治療時のLDLコレステロール値(LDL-C)180mg/dL以上(2)手背、肘、膝などの腱黄色腫、アキレス腱肥厚(X線軟線撮影で9mm以上)、あるいは皮膚結節性黄色腫 (3)二親等以内の血族でFHあるいは若年性冠動脈疾患の家族歴、の3項目のうち、2項目があてはまった場合にFHと診断。(1)あるいは(2)の1項目があてはまる場合、注意深い経過観察/再検査、家族に関するさらに詳細な調査等が必要である、とされている。
より積極的なLDL-C目標値の設定を検討する必要性
ベースラインデータによると、入院時のACS患者の平均LDL-Cは121.7mg/dLで、そのうち7.9%が180mg/dL以上、29.6%が100mg/dL未満だった。また、虚血性心疾患の既往がある患者の48.1%はLDL-Cが100mg/dL以上だった。3項目の診断基準を測定可能な1,391名のACS患者のうち、3.0%が2項目または3項目にあてはまり、FHの診断基準を満たした。
今後、このベースラインデータをもとにACS患者のFH診断、アキレス腱厚、およびPCSK9レベルに関して最終的なデータで解析される予定。同研究の運営委員長である、東邦大学医療センター大橋病院 循環器内科教授の中村正人氏は、同日開催されたメディアセミナーで「脂質管理および目標レベルは、高リスク患者およびCHDの既往歴のある患者では最適ではない可能性もあり、より積極的なLDL-C目標値の設定を検討する必要が示唆されます。ACS発症に関する危険因子のさらなる分析が必要です」とコメントした。
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