医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > 生物時計中枢を司る神経細胞ネットワーク活動の新規計測法を開発-北大

生物時計中枢を司る神経細胞ネットワーク活動の新規計測法を開発-北大

読了時間:約 1分50秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2017年03月13日 PM01:45

多数の神経細胞が一斉に同期した活動リズムを示すことを発見

北海道大学は3月8日、ほ乳類の概日リズムを作り出す生物時計中枢における神経細胞ネットワーク活動を数日間連続モニタリングできる新規計測法を開発し、多数の神経細胞が一斉に同期した活動リズムを示すことを発見したと発表した。この研究は、同大学大学院医学研究科光バイオイメージング部門の榎木亮介助教らによるもの。研究成果は、米国科学アカデミー紀要「Proceedings of the National Academy of Sciences」に掲載された。


画像はリリースより

ほ乳類の概日リズムの中枢は、脳の視床下部にある視交叉上核に局在する。視交叉上核は、網膜を介して光情報を受けて固有の周期を24時間に調節し、全身の細胞や臓器に統一のとれたリズム情報を出力。これにより睡眠と覚醒、体温調節、ホルモン分泌などの生理機能に24時間のリズムが作り出される。視交叉上核は数万個の神経細胞からなるネットワークを形成しているが、神経細胞の活動は膜電位変化の情報となって出力されるため、生物時計がどのように生体機能の24時間リズムを調節しているかを調べるには、多数の視交叉上核神経細胞における膜電位変化を数日間という長期間にわたり計測することが必要だ。

しかし、従来のガラス電極などを用いた計測方法では少数の細胞からの短時間の膜電位記録に限られ、また、遺伝子発現や細胞内カルシウムイオンを計測する方法では、神経細胞の出力を直接捉えることができなかった。さらに、従来の蛍光膜電位センサーは変化量が小さく、長期間安定的に計測することは極めて困難だった。

概日リズムの乱れによる様々な疾病の予防治療の開発に期待

研究グループは、蛍光膜電位センサーを視交叉上核の神経細胞に発現させ、高感度カメラにより長期間撮影することで、膜電位変化を可視化することに成功。その結果、カルシウムが細胞種特異的なリズム位相を示すのに対し、膜電位は生物時計の神経細胞全体が同期した概日リズムを示すことが分かったという。生物時計が統一のとれたリズムを全身に出力するメカニズムが神経活動のネットワークにあることが明らかになった。

神経細胞の膜電位変化は、活動電位の発生や神経伝達物質の放出に直接関わることから、中枢時計が全身の末梢時計を調節して、メリハリのある日々のリズムを作り出すために、視交叉上核の神経細胞ネットワークが同期したリズム情報を出力し、他の脳部位や全身にリズム情報を伝えていることが示唆される。今回の研究成果が、脳の時計が体のリズムを整える概日システムの基本メカニズムの解明につながると期待される。

現代社会において、概日リズムの破綻は様々な体と心の変調を引き起こし、高血糖、高脂血症、高血圧などのリスクファクターとなり、生活習慣病やうつ病の発症率を上げることが知られている。研究グループは、今回の新たな知見をもとにして、リズム障害の治療法や予防法を考えていくことで、健康の増進に寄与できるとしている。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • 前立腺がん、治療決定時SDMが患者の治療後「後悔」低減に関連-北大
  • 糖尿病管理に有効な「唾液グリコアルブミン検査法」を確立-東大病院ほか
  • 3年後の牛乳アレルギー耐性獲得率を予測するモデルを開発-成育医療センター
  • 小児急性リンパ性白血病の標準治療確立、臨床試験で最高水準の生存率-東大ほか
  • HPSの人はストレスを感じやすいが、周囲と「協調」して仕事ができると判明-阪大