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慢性腎臓病の進展抑制に、甲状腺ホルモンが関与-山梨大

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2017年03月13日 PM01:30

CKD患者の腎臓の炎症を軽減することで、腎機能悪化を阻止

山梨大学は3月7日、慢性腎臓病モデルマウスを用いて、甲状腺ホルモンが腎障害進行の抑制に重要な役割を担っていることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大学大学院総合研究部内科学講座第3教室の古屋文彦講師、北村健一郎教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」に、3月8日付けでオンライン掲載されている。


画像はリリースより

甲状腺で作られる甲状腺ホルモンは、血液に放出され体内を循環する。甲状腺ホルモン受容体は全身の細胞に発現していて、甲状腺ホルモンの作用を伝えているが、甲状腺ホルモンが低下した患者では、その作用が弱くなり動脈硬化やメタボリックシンドロームのリスクが高いことが指摘されている。

マクロファージは、体内に侵入してきた細菌などの異物を貪食して排除する細胞と考えられてきたが、近年、生体内の代謝産物にも応答して炎症反応を起こす多様な可塑性を有する細胞であることがわかってきた。メタボリックシンドロームの患者に多く見られる動脈硬化病変においてもマクロファージが関与しており、炎症性サイトカインを産生して慢性的な炎症を進めて組織の破壊をおこす組織障害性マクロファージと、線維化を進めて炎症を収束させる組織修復性マクロファージが存在することが知られているが、こうしたマクロファージの炎症細胞としての多様な分化のメカニズムはわかっていない。

)患者の腎臓や、メタボリックシンドロームの患者の血管では炎症細胞としてのマクロファージによる慢性的な炎症が、尿細管間質の線維化や動脈硬化の原因となっている。CKD患者の腎臓において、この炎症を軽減、収束させることができれば、腎機能の悪化を阻止できる可能性がある。また、マクロファージに発現している甲状腺ホルモン受容体が、炎症細胞が持つ悪い働きを抑制することができれば、CKDやメタボリックシンドロームの合併症の新しい治療法の開発につながることが期待できる。

透析療法を回避するための新しい治療法開発につながる可能性も

そこで研究グループは、甲状腺ホルモン受容体が欠損したマウスの骨髄を正常マウスに移植し、造血細胞で特異的に内因性甲状腺ホルモン受容体が欠損したマウスを作成。この骨髄の甲状腺ホルモン受容体欠損マウスを用いて、片側尿管を結紮したCKDモデルを作成すると、通常のマウスと比較して、尿細管間質が線維化し、ひどい腎障害をおこすことがわかった。このマウスの腎臓では、組織障害性マクロファージが集簇し、尿細管間質の線維化や腎障害を引き起こしていたという。

通常の状態では、甲状腺ホルモン受容体はマクロファージの転写因子の働きを調節して、炎症性サイトカインの産生を抑制し、炎症を収束させていたが、甲状腺ホルモンの働きがなくなると、マクロファージで転写因子の働きが活性化し続けてしまい、炎症性サイトカインの産生が遷延する慢性炎症の状態が続き、腎障害が進行することがわかったという。

今回の結果は、CKDの病態において甲状腺ホルモンとその受容体による作用が重要な役割を果たすことを示す画期的なもの。CKDはこれまで、生活習慣の改善や高血圧、糖尿病に対する治療が中心であったが、透析療法を回避するための新しい治療法開発につながる可能性が期待されると、研究グループは述べている。

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