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希少疾患・結節性硬化症。てんかんや発達障害と似た症状、脳腫瘍など予後不良の症例も

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2017年03月08日 PM03:00

患者は10,000人程度と推計、潜在患者も存在

ノバルティスファーマ株式会社が希少・難治性疾患をテーマに開催している3回シリーズのメディアセミナー。最終回となる第3回が3月2日に都内で行われ、慶應義塾大学医学部小児科学教室の高橋孝雄主任教授が「新世代の小児医療の使命について-結節性硬化症を例に-」と題して講演した。


慶應義塾大学医学部 小児科学教室
高橋孝雄 主任教授

)は、遺伝子に生じた変異が原因で発症し、脳、腎臓、肺、皮膚など身体の様々な箇所に腫瘍や病変が現れる疾患。代表的な症状は、てんかん、発達障害、自閉症など神経系の症状と、顔面の血管線維腫だが、成長にしたがってあらわれる腎血管筋脂肪腫()、)、脳室上衣下巨大細胞性星状細胞腫()などは、予後を左右する。ただし、症状の有無や程度は個人差が大きく、全くてんかん発作のないTSC患者もいるという。

日本におけるTSC患者は10,000人程度と推計されているが、診断は複合的な検査を必要とするため難しく、潜在的な患者も多いといわれる。胎児期の心エコーでTSCが疑われるケースや小児期に診断される患者が多く、治療方法はそれぞれの症状に対する対症療法が中心となる。完治が難しいことから、患者は生涯を病気とともに生きることになる。

日本小児科学会の会長を務める高橋氏は、小児医療の使命とは、「すべての子どもたちが、たとえそれが生まれつきのものであったとしても、環境によるものであったとしても、成長と発達の過程で直面する様々な困難を克服し、幸せな人生を手に入れることを手助けすること」だと語る。そのためには、最先端の高度先進医療に取り組むと同時に、患者に対して安全かつ安心な医療を提供することが重要だという。この観点からみると、例えば胎児期に心エコーでTSCの疑いを告げるのみで、治療や対処についての説明が十分に行われなければ、母親の不安をあおるだけの結果になると警告。診断名だけでなく、どんな症状が出る可能性があるのか、それに対して治療法があること、さらに、症状が出ない可能性もあるということを、きちんと伝えることが大切であるという。

多様な症状に対応する診療科間の連携、不十分

TSCの診断や治療に必要な検査としては、SEGA等の脳腫瘍に対してはCTやMRIを、てんかんでは脳波検査を、皮膚症状に対してはWood灯検査で白斑の確認を、眼の症状には眼底検査を行うなど多岐にわたる。そのため、治療は複数の診療科にわたる連携が必要となる。高橋氏は在籍する慶應義塾大学病院で、先日、母斑症センターの設立が決まったことを公表。同センターは、小児外科、形成外科、、皮膚科、泌尿器科、臨床研究推進センターが中心となり、関連する診療科・部門である呼吸器内科、脳神経外科、神経内科、産科、眼科、整形外科、精神・神経科、臨床遺伝学センター、看護部、薬剤部が連携し、総合的な診療を行う体制を整える。また、難病を抱えて生まれてきた子どもの一生を、責任をもって診る医師を育てることも、医育期間としての責務だと述べた。

同セミナーでは、TSC患者を子どもに持つ母親の会であるTSつばさの会から、代表の平岡まゑみさんと、同会会員で看護師として脳神経外科に勤めていた経験がある訪問看護師の岡田美紀さんも登壇。平岡さんは、同会の会員を対象に行ったアンケート結果を示しながら、小児期までに診断されている会員が多いが、なかなか診断がつかず、思春期・成人後になってようやく診断された会員もいることを示した。さらに、代表的な症状であるてんかん、発達障害、顔面血管線維腫のほか、腎病変を有する患者が7割以上と多いことを紹介。てんかんや発達障害がある患者にとって、透析導入は難しいという現実があることを説明した。岡田さんは母親の立場で、TSC児を抱える保護者の困難を説明。出産時に特徴的な白斑があったものの見過ごされたこと、1歳でてんかん発作を起こしTSCと診断されたこと、診断後は、次々に脳腫瘍や腎病変、精神神経症状などに見舞われ、医療施設探しに奔走、現在も症状ごとに多くの医療施設にかかっていることや、学校や周囲の理解を得るために日夜奮闘していることを訴えた。

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