幹細胞の複雑な維持機構の一端を解明
九州大学は2月21日、造血幹細胞が血液細胞を作り続けるメカニズムを解明したと発表した。この研究は、同大学大学院医学研究院の國﨑祐哉助教と、米国のアルバート・アインシュタイン医科大学が共同で行ったもの。研究成果は、「Nature Cell Biology」電子版に2月20日付けで公開されている。
画像はリリースより
幹細胞は、生物のあらゆる細胞、臓器を形成する能力をもつ細胞だ。生物は、発生初期の幹細胞から生まれるが、近年の研究により、胎児期だけでなく成人のあらゆる臓器にも、その臓器を再生する能力がある「臓器特異的幹細胞」の存在がわかってきた。
これらの細胞は、生涯にわたって無限に増殖する能力を維持しており、通常その増殖は厳格な制御を受けている。多くの細胞は「眠った状態」で存在し、臓器が傷害を受けた時など必要に応じて増殖し、分化する。幹細胞は、特殊な環境下でのみ「眠った状態」のままでいることができ、その環境は「ニッチ」と呼ばれている。
造血幹細胞の効率的な増幅法の開発、再生医療の加速への貢献に期待
造血幹細胞は、赤血球、白血球、血小板といったすべての血液細胞を作る元になる血液中の細胞。主に骨髄に存在しており、骨などの元になる間葉系幹細胞がその「ニッチ」細胞として知られていたが、その詳細なメカニズムはわかっていなかった。
研究グループは今回、間葉系幹細胞を遺伝子やタンパクの発現パターンにより分類することができ、さらにこれらは造血幹細胞を維持するための異なるサイトカインを産生していることを明らかにした。
造血幹細胞ニッチを構成する間葉系幹細胞は、その分布と発現タンパクよりnerve/glial antigen 2(NG2)陽性細胞とレプチン受容体陽性細胞に大別される。これらの細胞は各々がC-X-C motif ligand 12 (CXCL12)、Stem cell factor(SCF)とサイトカインを産生し、異なる環境を形成しているという。
今回のこの発見は、造血幹細胞の効率的な増幅法の開発、ひいては再生医療の加速に貢献するものと、研究グループは述べている。
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・九州大学 研究成果