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ヒトES、iPS細胞から1週間で神経細胞を分化させる「細胞分化カクテル」を開発-慶大

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2017年02月16日 AM11:00

細胞に数回添加するという簡単な操作で効率よく分化誘導

慶應義塾大学は2月14日、ヒト多能性幹細胞であるES細胞、iPS細胞から、1週間で90%以上という高い効率で神経細胞を分化させる「細胞分化カクテル」の開発に成功したと発表した。この研究は、同大学医学部坂口光洋記念講座システム医学教室の洪実教授、生理学教室の柚崎通介教授からなる研究グループによるもの。研究成果は「Scientific Reports」に2月13日付けで掲載されている。


画像はリリースより

、iPS細胞に関しては現在、ヒトの体を構成するさまざまな細胞へと培養皿の上で分化させ、再生医療での細胞移植の材料にすることや、病気や個人に合った薬剤のスクリーニングへの活用が試みられている。

培養法では、ヒトES、iPS細胞から胚様体と呼ばれる細胞塊を作り、培養条件を順次変えていくことで、徐々に細胞を分化させていく方法が主流だが、このような方法では、手間やコストがかかるだけでなく、場合によっては1か月以上という長期の複雑な培養が必要となり、薬剤のスクリーニングや細胞移植に必要な量の、均質かつ高品質に分化した細胞を得ることは難しく、再生医療分野の進展を阻む一因となっている。

創薬の大規模スクリーニングなどでの活用も

研究グループは、単層培養されているヒトES細胞、ヒトiPS細胞に、数回添加するという簡単な操作のみで、1週間で効率よく神経細胞の分化を誘導できる合成mRNAカクテルの創出に成功。この合成mRNAカクテルには、神経細胞の遺伝子発現調節に関わる5つの転写因子が、試験管内で合成されたmRNAの形で入っているという。培養1週間目で培養皿上の90%以上の細胞が、神経突起の密なネットワークを形成。電気刺激に反応できる機能的な神経細胞となっていた。また、運動神経に特異的なマーカーを発現しており、運動神経への分化が強く示唆されたという。

今回の方法の特徴は、従来のDNAとして遺伝子導入を行う方法と違い、遺伝子発現調節に関わる複数の転写因子を合成mRNAカクテルの形で細胞内に導入することで、細胞のゲノムDNAに傷をつけないことに加え、人為的な細胞操作の跡を残さないという点で、より安全な細胞分化方法として将来の治療への展開が期待できるという。また、量産可能で安全性も高い合成mRNAカクテルは、細胞移植に必要な大量の神経細胞の創出を可能とするだけでなく、操作が極めて簡便であるため、製薬業界で汎用されているロボットを活用した薬の大規模スクリーニングでの活用も期待されるという。研究グループはすでに、ヒトES細胞、iPS細胞から骨格筋細胞や涙腺上皮様細胞へ5日間で分化することにも成功しており、今後もさまざまな分化細胞を作りだす分化カクテルの研究を進めていくとしている。

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