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希少がん「神経内分泌腫瘍」、2割は診断時には遠隔転移

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2017年02月07日 PM02:00

ホルモン産生症状がある「機能性NET」では多様な症状呈する

2月28日の「世界希少疾患・難治性疾患の日」を前に、ノバルティスファーマ株式会社は「希少・難治性疾患患者さんが抱える課題と、疾患へのより良い理解を目指して」と題した3回シリーズのメディア勉強会を開催。その第1回となる「)の診断・治療の実際と課題」が2月1日に都内で行われ、九州大学大学院 医学研究院 病態制御内科学の伊藤鉄英准教授が講演した。


九州大学大学院 医学研究院 病態制御内科学
准教授 伊藤鉄英氏

神経内分泌腫瘍(NET)は、神経内分泌細胞から発生する腫瘍の総称で、膵臓、下垂体、消化管、肺などさまざまな臓器に発生する。発症率はこの30年間で10万人あたり1.09人から5.25人へと約5倍に上昇しており、増加傾向。ホルモン産生症状のある機能性とホルモン産生症状のない非機能性に大別されるが、膵・消化管NETの場合は機能性であることが多いという。機能性NETでは産生されるホルモンにより多様な症状を呈し、インスリンを産生するインスリノーマでは低血糖症状、ガストリンを産生するガストリノーマでは胃潰瘍や下痢、グルカゴンを産生するグルカゴノーマでは遊走性壊死性紅斑や耐糖能異常などがみられる。

伊藤氏らの報告によると、日本人の膵NET受療者数は1年間で3,000人程度。そのうち21%は診断時に遠隔転移を有する。さらに、2005~2010年の5年間で非機能性腫瘍の占める割合が45%から65%に増加しており、診断能の向上も背景にあるという。一方、消化管NETは、年間受療者数が8,000人程度。直腸・結腸に発症する例が55.7%と多く、胃・十二指腸は30.4%、空腸・回腸・虫垂では9.6%で、欧米人は、空腸・回腸・虫垂が多く人種差がある。

多様な病態、薬物治療は副作用も考慮して使い分けを

治療では、手術可能な症例には原則として手術を行うが、膵NETでは5年以内に25%が再発するという報告もあり、術後の経過観察が重要となる。手術不能例に対しては薬物治療で、腫瘍抑制と症状緩和を図る。消化管NETにはソマトスタチンアナログ製剤のオクトレオチド、膵NETには分子標的薬のスニチニブとエベロリムスが用いられる。2014年には膵・消化管NETの適応で抗がん剤ストレプトゾシンが、2016年にはエベロリムスの適応追加で消化管NETにも使用可能となっている。「使用可能な薬剤が増えたことで、原発巣や病態、予想される副作用などを考慮しながら薬剤を使い分ける必要がある」と伊藤氏。2017年には診療ガイドラインの改訂も予定されている。

さらに同セミナーでは、膵臓がんの患者団体「パンキャンジャパン」理事長の眞島喜幸氏も登壇し、国際神経内分泌腫瘍同盟(INCA)とノバルティス社が2014年に共同で実施したグローバルNET患者調査の結果を紹介。NET患者が診断までに要した時間が平均2.5年、診断までに診察を受けた医師などの医療専門家は平均4~5人と、診断まで複数の医療機関を受診し時間がかかっている状況が明らかになったという。

また診断後においても、NETについて十分な説明を得られたと回答したのは約半数、診断過程には改善の余地があると感じている患者が8割を占めた。NET診断に対して改善が望まれる点として、「医療専門家の知識の強化」「有用なNET情報の入手先についてのより効果的な指針」が63%ともっとも多く、次いで「NETの専門知識・技術を持つ適切な医師へのスピーディなアクセス」(56%)が続いた。眞島氏は、「患者はどこに専門家がいるか早く知りたいと思っている」と述べ、NETのさらなる認知度向上が必要であると訴えた。

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