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薬用植物の国内生産確立へ-熊大薬学部と地場企業が連携

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2017年01月25日 AM10:15


■4共同研究講座設け推進

熊本大学薬学部と熊本県の地場企業は、漢方薬や機能性食品などの原料となる薬用植物を高品質で安定的に国内生産できるシステムの開発に共同で取り組む。文部科学省から得た資金をもとに5階建ての「自然共生型産業イノベーションセンター」を薬学部薬草園内に新設。ここを拠点に平田機工など複数の地場企業と共同研究を進め、事業化を実現したい考え。震災からの地場産業復興を目指す熊本県もこの輪に加わり、様々な形で支援する計画だ。

文科省の「地域科学技術実証拠点整備事業」として得た約9億円の資金を投じ、同センターを新設する。今年度末までに設計を終え、来年秋頃に竣工する見通し。延べ床面積は2049m2。複数の地場企業と共同研究を行うための設備や、知財創出・管理、外部資金支援、熊本県や肥後銀行などによる事業化支援の拠点を各フロアに設け、産学官連携イノベーション施設として活用する。

研究は、参画する複数の地場企業と合計四つの共同研究講座を設けて進める。既に二つの講座が立ち上がっており、今年4月と7月に計2講座を新設する計画だ。規模の小さい地場企業にとって個々に研究設備を設けるのは負担が大きいが、この共同研究体制によって研究拠点を確保できる。優秀な人材も確保しやすくなる。大学研究者にとっても基礎研究の成果を実用化させやすい。地方の国立大学として地域に密着し、新たな産業の創製に共同で取り組む。

複数の共同研究テーマのうち中核となるのが、高品質で安定的な甘草の国内生産システムの確立だ。生産ラインなどの制御技術を有する平田機工、熊本市近郊に日本最大規模の水耕栽培農場を有する河合興産などとの共同研究として実施する。

甘草は、漢方薬の原料として汎用され需要が大きいものの、大半は中国からの輸入に頼っている。輸入量の減少や価格高騰、品質悪化のリスクに対応するため、国内生産体制の確立が各地で模索されている。

国内外から数多くの薬用植物を収集している渡邊高志教授(薬学部附属薬用資源エコフロンティアセンター長)の知見や研究成果を生かし、高品質な甘草の苗を国内外から調達できるルートを確立する。また、その苗を高い品質で栽培するために必要な環境を再現する「栽培環境評価システム」の構築にも取り組む。さらに、土耕型水耕栽培法など具体的な生産方法の確立にも注力する。

これらを組み合わせて革新的な薬用植物生産システムを形作りたい考えだ。それを事業化し、生産した国産甘草を国内外市場に投入する。甘草で確立したノウハウは将来、他の薬用植物にも応用できる可能性がある。

このほか、再春館製薬所や、サプリメントや健康食品を販売する「えがお」と共同で、美容食品や化粧品、機能性食品に薬用植物などを活用する研究を進める。そこで必要な薬用植物の調達には、構築した生産システムを活用できる。

もう一つの研究の柱は、薬用植物由来成分から新規疾患治療薬を開発する研究だ。熊本大学が有する研究基盤や疾患評価モデルを生かして、抗HIV薬や慢性腎臓病治療薬の作用を薬用植物由来成分に見出す研究を進める。ここでも効率的で低コストな薬用植物の栽培に、構築した生産システムを利用できるという。

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