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認知症・うつ病に似た症状の「肝性脳症」に新規治療薬登場-あすか製薬

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2017年01月24日 PM01:00

推計患者数約3万人も、十分に認知されず

肝性脳症における高アンモニア血症の改善を効能・効果とする難吸収性抗菌薬「」(一般名:)が2016年11月29日に発売されたことを受け、あすか製薬株式会社は2017年1月18日、「知られざる『肝性脳症』の病態と最新治療」と題してプレスセミナーを開催。大阪市立大学大学院 医学研究科 肝胆膵病態内科学 教授の河田則文氏が講演した。


大阪市立大学大学院 医学研究科
肝胆膵病態内科学 教授 河田則文氏

肝性脳症は、肝炎や肝硬変が進行し、肝機能の低下によりアンモニアなどの有害物質を解毒化できなくなることで起こる合併症で、日本における患者数は推計約3万人。重症化すると昏睡状態に陥る危険な疾患だ。初期症状が認知症、抑うつ、アルコール中毒による認知機能低下に類似しているうえ、肝疾患の合併症であることから十分に認知されていない。

進行すると、自宅住所や電話番号がいえなくなる指南力障害や異常行動がみられ、患者本人だけでなく、家族や周囲の負担も大きくなるほか、特徴的な身体症状として、手指が鳥が羽ばたくように動いてしまう「羽ばたき振戦」がある。国内の肝炎患者数が推計300万人、肝炎が慢性化して発症する肝硬変の患者数は50万人といわれることから、肝性脳症のリスクのある患者は非常に多いと考えられる。

超初期の「ミニマル肝性脳症」の関連性解明にも期待

通常、アンモニアは肝臓で代謝・解毒されるが、肝細胞障害や門脈-大循環短絡路(シャント)があると代謝されず、高アンモニア血症をきたして肝性脳症を発症する。治療ではこのアンモニアがターゲットとなる。従来は、アンモニアの産生・吸収を抑制する合成二糖類と、筋肉におけるアンモニアの代謝を促進する分岐鎖アミノ酸(BCAA)が用いられてきた。今回発売された難吸収性抗菌薬リフキシマは、合成二糖類と同じく腸管内で作用して、アンモニアの産生を抑制する。肝臓学会による治療アルゴリズムでは、既存治療での不応例に用いるとされているが、「下痢による脱水が問題となるような患者の場合は、まずリフキシマを使うケースも出てくるだろう」(河田氏)。さらに、問題となるような副作用が出てこなければ、認知症との鑑別が難しい例に対して、治療的鑑別診断として同剤を投与し、反応を見ながら肝性脳症を鑑別する、という使い方も考えられるという。

河田氏は、同剤550mgを1日2回投与したリフキシマ群ではプラセボ群に比べ、肝性脳症による入院までの期間を有意に遅らせた論文や、同剤1,200mg/日を投与した肝硬変患者は対照群に比べ5年生存率が有意に改善された論文を紹介し、実臨床でこれらの結果が裏付けられるかどうか期待をのぞかせた。

また河田氏は、近年米国では、自覚症状のない超初期の肝性脳症である「ミニマル肝性脳症」が、日常生活のQOLや労働効率を低下させ、交通事故のリスクを高めている可能性が指摘されていると紹介。今後、同症の認知が高まり、こうしたリスクとの関連が明らかにされていくことが期待される。

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