マウス実験により明らかに
京都大学は6月7日、活性酸素が精子幹細胞の自己複製分裂に関与することを同大学の篠原隆司教授らの研究チームが突き止めたことを発表した。
(この画像はイメージです。)
マウスの精子幹細胞に健康な人の体内と同程度の活性酸素を加えて培養すると、加えなかった場合の約13倍に増えた。この細胞からできた精子を使用して人工授精を行うと、正常なマウスが誕生した。しかしながら活性酸素を高濃度にしたところ、精子幹細胞は死滅してしまったという。
活性酸素は細胞内の酵素を不活性化し、生殖細胞においても卵子の染色体異常や受精後の細胞死に関与することが知られている。精子においては動物実験によって、さまざまな段階での精子形成細胞にダメージを与えることがわかっていた。
しかし今回の結果により、精子幹細胞の保存と自己複製分裂には適度な量の活性酸素が必要だということが明らかになった。
今後の男性不妊症治療に期待
男性不妊症の治療にこの研究結果が寄与することが期待される。
今回の研究成果は活性酸素の低下が精子を作るもととなる幹細胞の増殖を低下させる作用があるということを明らかにしました。このため、不妊男性の活性酸素を低下させると幹細胞の能力が低下し、必ずしも精子形成全体には良い影響があるとは言えないことを示唆します。その点で今回の成果は不妊患者への治療のあり方を幹細胞のレベルから新たに見直す必要があることを示唆するものです。(京都大学ホームページより引用)
(小林 周)
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