タブレットPCを用いたゲームを開発、無作為比較対照試験で効果検証
東北大学は1月13日、タブレットPCを用いた処理速度トレーニングゲームを開発し、高齢者を対象に無作為比較対照試験を用いて効果検証を行った結果、1日15分の処理速度トレーニングゲームを4週間実施したグループは、同じ期間知識クイズを実施したグループよりも、処理速度と抑制能力が向上し、抑うつ気分が低下することが明らかになったことを発表した。この研究は同大学際科学フロンティア研究所の野内類助教と加齢医学研究所の川島隆太教授を中心とする研究グループによるもの。研究成果は、2016年12月23日発行のオンライン雑誌「Frontiers in Aging Neuroscience」に掲載されている。
画像はリリースより
認知機能は加齢とともに低下し、買い物や車の運転などに影響を及ぼして高齢者の日常生活を困難にする要因のひとつとなるため、認知機能を維持・向上させるトレーニングの開発には多くの関心が寄せられている。これまで、研究グループは、脳トレゲームや音読・計算トレーニング、サーキット運動トレーニングを実施すると高齢者の認知機能が向上することを明らかにしているが、今回は、新たに処理速度(情報を速く・正確に処理する能力)をトレーニングするため、タブレットPCを用いたゲーム(処理速度トレーニングゲーム)を開発し、無作為比較対照試験を用いて効果の検証を行った。
認知症予防や精神的健康の改善ツールとしての応用に期待
地域タウン誌の広告で募集した、精神疾患、脳疾患、高血圧の既往歴のない健康な高齢者72人を、処理速度トレーニングゲームを実施する「処理速度群」と、知識クイズゲームを実施する「クイズ群」に分け、無作為比較対照試験を実施。両群ともに4週間(週5回以上1日15分)のタブレットPCを使ったゲームトレーニング介入を行った。また、トレーニング介入前後の認知機能検査や感情状態などを聞く心理アンケートを実施し、トレーニングによる変化を計測した。
認知機能検査と心理アンケートの標準化した向上量(介入後の得点から介入前の得点を引いて算出)を用いて、処理速度群とクイズ群のトレーニングの効果を調査。その解析の結果、処理速度群のほうがクイズ群よりも、処理速度と抑制能力が向上し、抑うつ気分が低減することがわかったとしている。
今回の成果より、処理速度トレーニングを実施すると、4週間という短い期間であっても高齢者の認知機能が向上し、抑うつ気分が低下することが初めて明らかとなった。処理速度トレーニングは高齢者であっても取り組みやすいことから、今後の高齢者の認知症予防や認知機能の維持・向上のためのツールや高齢者の抑うつ気分の低減や精神的健康の改善ツールとしての応用が期待されると、研究グループは述べている。
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