EGFR-TKI耐性獲得患者の40%が治療機会を逸する可能性
アストラゼネカ株式会社は1月5日、抗悪性腫瘍剤/チロシンキナーゼ阻害剤「タグリッソ(R)40mg/80mg」(一般名:オシメルチニブメシル酸塩)のコンパニオン診断薬「コバス(R)EGFR変異検出キットv2.0」(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社)を用いたT790M血漿検査結果の倫理提供(T790M血漿検査結果提供プログラム)を開始することを発表した。
タグリッソは、「EGFRチロシンキナーゼ阻害薬に抵抗性のEGFR T790M変異陽性の手術不能又は再発非小細胞肺癌」を効能・効果とし、2016年5月25日より販売されている。同剤は、治療開始前に患者のEGFR T790M変異陽性を確認する必要があり、これまで検査にはEGFR T790M遺伝子変異検査(診断薬名:コバス(R)EGFR変異検出キットv2.0)が用いられていた。
T790M検査は、組織検体もしくは血漿検体を用いて行われるが、現在日本において保険適用されているのは組織検体によるT790M検査のみであった。再生検による腫瘍組織の採取は侵襲性を伴うため、患者の状態や腫瘍径や再発部位によっては組織採取が困難な場合があり、EGFR-TKI耐性獲得患者のおよそ40%は、T790M組織検査を受けられず、治療機会を逸する可能性があった。
対象施設・患者へT790M血漿検査結果を無償提供
同社は、これらの患者に早期の治療機会を提供する方法について検討。その結果、血漿検体によるT790M検査が保険適用されるまでの期間、同剤が納入または採用されている医療施設に限定して血漿検査の結果を無償提供することが、患者の利益に資する妥当な手段であると判断したという。
対象となる施設は、同剤が納入されている施設あるいは同剤が薬事審議会等の院内規定に基づいて正式採用または仮採用(臨時採用等含む)されている施設のいずれか。対象患者は、「1. EGFR-TKIに抵抗性の手術不能または再発非小細胞肺癌患者」、「2. 腫瘍組織の採取(再生検)が困難なため、T790M組織検査を実施できない患者」、「3. T790M血漿検査を用いた臨床研究等により、検査費用が負担されていない患者」の3つすべての要件を満たす必要がある。
同社は、この倫理提供の取り組みにより、ひとりでも多くの患者が早期に最適な治療を開始できるようになることを望むとしている。
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・アストラゼネカ株式会社 プレスリリース