認知症家族介護者、70%が患者と同居
認知症では家族介護者の負担が大きいことが知られているが、こうした家族介護者向けの介護教室を通じて介護者が認知症に対する知識や対応を学ぶことで、介護うつや介護者の負担感が軽減される可能性があることがわかった。東京医科大学高齢総合医学分野の寺山英之氏が第35回日本認知症学会学術集会で発表した。
寺山氏らは、自施設で2014~2015年に行った介護者向けの介護教室を受講した認知症家族介護者47人を対象に、受講前と受講3か月後の介護状況・介護負担感・介護うつの状況について調査を行った。介護教室は認知症の経過、精神症状・異常行動の基礎知識や対応方法、成年後見人制度などの知識などを2回に分けて、1回90分を2か月連続で実施している。
対象となった家族介護者47人の背景は、男性12人、女性35人、平均年齢62.7±11.6歳、平均教育歴は14.7±2.0年で、現在も職業あり47%、健康状態良好が81%。介護を受けている認知症家族の平均年齢は81.7±6.1歳、認知症のミニメンタルステート検査(MMSE)の平均スコアが20.8±5.6点、病型分類では「アルツハイマー病単独」が55%と半数を超え、「アルツハイマー病と血管性認知症の併発」が21%、「レビー小体型とパーキンソン病での認知症」が11%、「軽度認知障害」が9%、「前頭側頭型認知症」が4%。介護者との続柄は夫11%、妻26%、子供(義理関係も含む)が64%だったという。また、介護者の1日の平均介護時間は4.5時間で、70%が患者と同居していた。介護について相談できる人の人数は、「なし」が13%、「1名」と「1~4名」が各32%、「5~7名」が23%だった。
介護教室受講後に、介護者のうつ病・負担感が有意に軽減
介護者47人の介護教室受講前のうつ病自己評価評価尺度(CES-D)の実施結果では、36%が「抑うつ状態(CES-D16点以上)」と診断された。介護教室受講3か月後にはこの「抑うつ状態」が17%と半減(p=0.039)。Zarit介護負担尺度日本語版(J-ZBI)のポイントも受講前に比べ、受講3か月後には統計的に有意な改善を示した(p=0.037)。
受講前のCES-Dの高さと有意に相関した要素は、「介護者のQOL(EQ-5Dによる調査)」、「J-ZBI」、「認知症について調べたことがない人」、「金銭的不安を抱えている人」だった。また、介護教室受講によりCES-Dの変化量(低下)が大きかった介護者で統計的に有意に相関した要素は、(1)金銭的不安が大きい、(2)患者の認知機能が低い、(3)教育歴が長い、であったという。
これらの結果から寺山氏は「今後、認知症での介護指導の重要性の認知を高め、介護教育が広く普及していくことが望まれる」と結論付けている。
▼関連リンク
・第35回日本認知症学会学術集会