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高齢者大腿骨近位部骨折の早期手術実現へ、多職種連携アプローチの実例報告会

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2016年11月29日 PM04:00

多職種連携で業務効率化、骨折前の歩行を取り戻す患者も

ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社メディカルカンパニーは11月19日、大腿骨近位部骨折の診療に関わる医療従事者を対象とした「多職種連携アプローチセミナー」を千葉県千葉市で開催。富山市立病院の澤口毅副院長を座長に迎え、同施設と聖隷佐倉市民病院の担当チームが講演した。同セミナーで富山市民病院の担当チームが講演するのは、前回広島での開催に続き今回が2回目。小雨の降る中、会場には近隣の医療施設から多くの医療従事者が集まり、活発な質疑応答が行われた。

大腿骨近位部骨折は高齢者に起こりやすく、骨折後は体力低下に伴う合併症の発生や、寝たきり・認知症のきっかけとなる。QOLを著しく低下させるだけでなく、骨折後は生存率も低下する。骨折をきっかけに介護が必要になる例も多く、患者自身のみならず、介護にあたる家族の負担や社会経済的負担も大きくなる。

近年、骨折後の早期に手術を行うことで、ADLの低下を抑制できるとされ、海外のガイドラインでも骨折後24時間以内の手術が推奨されている。2011年に改訂された「大腿骨頚部・転子部骨折診療ガイドライン」でも、合併症が少なく、生存率が高く、入院期間が短くなることから、早期の手術をGrade Bで推奨している。しかしながら、日本では手術室の空き状況や、患者の基礎疾患を含む総合的な診療に時間がかかるため、2014年の調査によると、手術までの待機日数は平均4.5日という。また、手術後の合併症としてせん妄などの精神症状をきたす例が多いこと、二次骨折予防として骨粗しょう症の治療を継続する必要があることなど、治療においては整形外科のみならず、他の診療科やコメディカルスタッフとの連携が欠かせない。

富山市民病院では、以前から大腿骨近位部骨折の早期手術を行っており、2014年からは、高齢者骨折を整形外科の単なる骨折患者としてではなく、多様な基礎疾患を有する高齢患者として病院全体で治療することを目指し、多職種連携アプローチを行う医療プロジェクトを立ち上げ、いち早く取り組んできたという。同セミナーでは、富山市民病院の整形外科、麻酔科、内科、精神科の医師と、看護師、理学療法士、栄養士、ソーシャルワーカー、薬剤師が、それぞれの立場からこの取り組みを紹介した。

多職種連携の実現には、病院全体の理解が必要

富山市民病院において、多職種連携プロジェクト開始前における課題は、「手術前の内科との連携」、「手術後の精神科との連携」、「二次骨折予防で病棟薬剤師との連携」であったという。これらの課題解決のため、同院では院内ガイドラインを作成して関連する各診療科・職種間で一律に情報共有。受診基準や確認項目などを標準化することで業務が効率化し、スムーズに手術から回復期リハ病院への転院へ進めることができるようになったという。

さらに、同セミナーでは、千葉県内で同じく大腿骨近位部骨折治療で多職種連携に取り組む聖隷佐倉市民病院から、老年内科医と整形外科医、骨粗鬆症リエゾンサービス委員会の看護師も登壇。昨年から大腿骨近位部骨折の24時間以内の手術実施に取り組み、7月に広島で行われた同セミナーにも参加、9月から本格的に多職種連携のプロジェクトを進めているという。今回は、セミナー参加後の変化も織り交ぜながら同院の取り組みを紹介した。

今後、高齢化の進展に伴い、大腿骨近位部骨折患者の増加は不可避と見込まれている。骨折患者への早期介入と骨折後の二次予防について、多職種連携の必要性はますます高まると考えられる。同社では、今後も全国各地で同様のセミナーを開催していきたいとしている。

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