HR+/HER2-転移乳がんに対する一次治療では約10年ぶりの新薬
米ファイザー社は11月10日、「IBRANCE(R)」(一般名:パルボシクリブ)が、ホルモン受容体陽性(HR+)・ヒト上皮成長因子受容体2陰性(HER2-)局所進行または転移乳がん治療薬として欧州委員会より承認されたと発表した。適応症は、アロマターゼ阻害薬との併用、または内分泌療法を受け疾患進行を認めた患者に対するフルベストラントとの併用。
乳がんは、欧州の女性に最も多い浸潤がんで、早期乳がんと診断されて治療を受けた患者の最大30%が転移乳がんに進行する。現在のところ、転移乳がんの根治的治療法はなく、がんの増悪を抑え、症状をコントロールするとともに、生活の質をできるだけ長く維持する新たな治療選択肢が必要とされている。
欧州初のCDK4/6阻害薬、承認国は50か国超に
IBRANCEは、欧州で承認された最初のサイクリン依存性キナーゼ(CDK)4/6阻害薬。CDK4/6は、細胞周期の調節に主要な役割を果たしており、細胞増殖を引き起こす。HR+/HER2-転移乳がんは、全ての転移乳がんの約60%を占めるとされ、同剤は、HR+/HER2-転移乳がんにおける一次治療薬としては、およそ10年ぶりに承認された新薬となる。今回の承認取得により、同剤の承認国は50か国を超えた。
今回の申請資料には、初回内分泌療法としてエストロゲン受容体陽性(ER+)/HER2-閉経後進行乳がんを対象とした第2相試験(PALOMA-1)、同じ患者集団を対象とした第3相試験(PALOMA-2)、内分泌療法を受け疾患進行を認めたHR+/HER2-転移乳がん(閉経状態を問わない)を対象とした第3相試験(PALOMA-3)の結果が含まれる。これら3つの無作為化試験のいずれにおいても、IBRANCEと内分泌療法の併用投与は、内分泌療法単剤投与または内分泌療法とプラセボの併用投与に比べ、無増悪生存期間(PFS)を有意に延長したという。
EUにおいてIBRANCEが承認されたことで、何万人ものHR+/HER2-転移乳がん患者に、革新的で医療ニーズの高い治療選択肢がもたらされる。IBRANCEは米国で標準治療薬として急速に浸透しており、今後欧州でも、HR+/HER2-転移乳がん治療の新しいベンチマークとなる可能性があると、同社は述べている。
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・ファイザー株式会社 プレスリリース