岡山大学と理化学研究所が開発
岡山大学(岡山県岡山市)と理化学研究所(埼玉県和光市)の共同研究グループは、5月27日、進化分化工学的手法によって作製したコラーゲン結合性BMP4で、担体なしで限局した部位での骨形成誘導に成功したと発表した。
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この成果は4月9日に「Nanomedicine」電子版に掲載された。
BMP4は局所での持続がカギ
骨形成因子Bone Morphogenetic Protein (BMP) 4は、TGF-βファミリーに属するタンパク質。骨格形成を含むさまざまな生理的骨形成に必須のサイトカインである。アメリカでは、BMP2とBMP7/OP1がFDAに認証され、BMP2を中心に整形外科領域での臨床研究が進められているが、その強い骨誘導能の制御が難しく、また大量生産には非常にコストがかかることも臨床応用の課題となっており、投与部位に限局した持続効果を得られる薬剤送達システムDDSが望まれている。
骨再生への壁
骨腫瘍や外傷による骨欠損、癒合不全などの治療は、現在、患者の腸骨から骨を採取して移植する自家骨移植が行われているが、採取できる骨量や形状の限定、治療に伴う痛みなどが大きな課題となっている。
コラーゲン結合性付与で局所滞留性向上
BMP4は、投与後3日で消失することから、局所での骨誘導が困難とされてきた。そこで、岡山大学らの研究チームは、BMP4にコラーゲン結合(CBD)能を付与し投与、2週間投与部位に留まることを証明した。マウス骨髄内及び頭蓋骨欠損部にCBD-BMP4を単独投与し、有為な骨形成を誘導できた。
低コスト、高い治療効果に期待
通常、骨形成誘導にはBMPなどをコラーゲンなどの足場に浸透させて投与するが、本研究の手法では足場が不要であり、これまでにない低容量での治療効果を実現。コラーゲンが多い骨形成部位の特徴を利用し、薬効成分の拡散を防ぎ、骨欠損や癒合不全などの治療に有効となる可能性を示した。安価に大量生産できないタンパク質製剤において、画期的な治療法として期待される。(長澤 直)
▼外部リンク
岡山大学プレスリリース
http://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id28.html