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インフルエンザ感染防止の新しい機構を明らかに-理研・理科大

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2016年11月04日 PM01:30

IgG2抗体に焦点を当てて、抗体産生を研究

理化学研究所は11月1日、マウスを用いてインフルエンザウイルスの活性を減退または消失させる抗体(中和抗体)誘導の新しい制御機構を明らかにしたと発表した。この研究は、理研統合生命医科学研究センターサイトカイン制御研究チームの久保允人チームリーダー(東京理科大学生命医科学研究所教授)と宮内浩典研究員らの共同研究グループによるもの。研究成果は、英科学誌「Nature Immunology」オンライン版に10月31日付で掲載された。


画像はリリースより

インフルエンザウイルスは喉や鼻から体内に侵入し、気道や肺で爆発的に増殖することで重篤な肺炎を引き起こす。特に鳥インフルエンザウイルスなどの病原性の高いウイルスが、変異を繰り返してヒトに感染できるようになると、多くのヒトが死亡すると危惧されている。

ワクチン接種は、ウイルスが体内へ侵入することを防ぐ抗体を誘導するための有効な手段だが、これまでワクチン接種による抗体の誘導は、抗体産生の場である「胚中心」と「リンパ濾胞型ヘルパーT細胞(TFH細胞)」の両方が必要とされてきた。これは、ウイルスに対して高い結合能(親和性)を持つ抗体が、胚中心でTFH細胞に助けられて作られるため。このため効率よくTFH細胞を活性化することが、効果の高いワクチンの開発につながると考えられていた。

効率よくTH1細胞を活性化する新たなワクチン開発へ

今回研究グループは、季節性インフルエンザウイルスと高病原性鳥インフルエンザウイルスを使って、胚中心やTFH細胞を持たないマウスにワクチンを接種することで、中和活性(ウイルスの感染を阻止する作用)の高い「免疫グロブリンG2抗体()」が作られることを発見。IgG2抗体は、インフルエンザウイルスへの親和性は高くないものの、中和活性が高いためウイルス感染を十分予防できるという。

また、TFH細胞に代わってインターフェロン-ガンマ(INF-γ)を産生する「I型ヘルパーT細胞()」が、IgG2抗体を誘導することも明らかになった。このことから、TH1細胞によって誘導される低親和性の抗体(IgG2抗体など)は、ウイルス抵抗性を付与することがわかったという。

今回の研究成果により、TH1細胞を活性化することで、低親和性にもかかわらず中和活性が高い抗体を産生できることが判明した。将来起こると予測されるインフルエンザウイルスのパンデミック感染の脅威に対抗する新たな戦術として、効率よくTH1細胞を活性化する新たなワクチンの開発に役立つと考えられると、研究グループは述べている。

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