心機能評価の難しさが臨床上の課題だった
株式会社フィリップス エレクトロニクス ジャパンは10月25日、都内でプレスセミナーを開催。産業医科大学病院臨床検査・輸血部部長の竹内正明氏が「心房細動に対する心エコーの有用性」と題して講演した。
産業医科大学病院臨床検査・輸血部部長
竹内正明氏
竹内氏は、「心房細動は、日常臨床の中で、循環器内科医が最も遭遇する不整脈のひとつ」とし、国内の慢性心房細動患者数が、1980年は約40万人だったのに対し、2010年には約100万人と増加傾向であることを紹介。「心房細動が原因で脳卒中を起こした患者の半数が、死亡、寝たきり、あるいは何らかの形で介護が必要になっている」(竹内氏)
そのため、心房細動の治療においては、患者の心機能を正確に評価し、その状態に応じて適切な治療につなげることで、合併症を防ぐことが重要とされている。ただ、心房細動は心拍にばらつきがあり、この心拍によって心機能が変化することから、評価の難しさが臨床上の大きな課題だった。
全自動で多心拍の平均値を短時間で測定することが可能に
竹内氏は、左房内血栓の診断には経食道心エコー検査が有用であると指摘。「食道、胃内に挿入し、心臓の背後からエコーにより心臓を観察するため、何の介在物もなく、極めてよく見ることができる。産業医科大学病院では、経食道心エコー検査を行った患者の3割の目的は塞栓源の検索」と語った。さらに、心房細動患者では、左房に霧のような「もやもやエコー」と呼ばれる画像所見が見られるが、これが中等度の場合は5人に1人、高度の場合は2人に1人に血栓があることも説明した。
通常、同検査は2断面シンプソン法で行われるが、検者間で誤差があるなどの課題がある。竹内氏は、より測定方法がシンプルで正確性も高い、同社販売の一心拍3D収集+3次元全自動解析ソフト「Heart Model」を紹介し、全自動で多心拍の平均値を比較的短時間で求めることができるなどと説明した。
80歳代の10人に1人に起こる心房細動。超高齢社会の今、心不全や脳梗塞などを防ぐために、より正確性の高い診断法の普及が望まれる。