二次予防例では、冠動脈慢性閉塞病変の存在が有意な予後不良因子
国立循環器病研究センターは10月25日、狭心症や心筋梗塞など虚血性心疾患患者の中でも特に重症例が多い植込み型除細動器(ICD)移植後の患者の解析を行った結果、植込み時に冠動脈慢性閉塞病変(CTO)があると長期的な予後が不良であることを明らかにした研究結果を発表した。この研究は、同センター冠疾患科の藤野雅史医師や安田聡副院長らの研究チームによるもの。研究成果は、英医学誌「Europace」に10月13日付で掲載されている。
画像はリリースより
急性心筋梗塞は、心臓に酸素や栄養を供給する冠動脈の血流途絶によって、その灌流域が壊死する疾患。近年、カテーテル治療の発展による再灌流療法の普及で、心筋梗塞の治療成績は劇的に改善したが、救命に成功してもその後に心機能低下・心不全・不整脈などを発症する場合があるという。著明な心機能低下や致死性不整脈の既往など突然死ハイリスク症例では、突然死予防のためICDが適応になる。冠動脈がプラークや血栓で慢性的に閉塞している状態が虚血性心疾患患者の予後に悪影響を与えることは既に報告されているが、ICD移植例においては一定の見解が得られていなかったという。
最適な治療法選択で、一層の救命率の向上や予後改善を目指す
国循では年間50~60例にICD植込み手術を実施、そのうち虚血性心疾患患者は20%程度とされる。研究チームは、2007~2012年までに国循で初めてICDを移植された虚血性心疾患の患者84例を対象に、植込み手術時にCTOのある群とない群に分けて、それぞれの経過を分析した。
その結果、CTOのある群で死亡率および心臓イベント率(心臓死、適切なICD作動、心不全入院、補助人工心臓移植の複合イベント)が高い傾向を認めたという。さらに致死性不整脈の既往のある二次予防群(47例)では、CTOのある群で死亡率と心臓イベント率が有意に高いことを証明した。一方で、一次予防群やCTOがない群では有意差を認めなかったという。
今回の研究により、突然死のハイリスク患者であるICD植込み後の虚血性心疾患の患者において、CTOの存在は予後不良因子であることが明らかとなった。CTOに対する手術も含めた血行再建治療による予後改善効果については、今後症例数を増やしての解析が必要であるとしている。
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・国立循環器病研究センター プレスリリース