骨にも感覚神経がある
慶應大、東京医科歯科大などの共同研究グループは体や内臓の感覚を伝える感覚神経が骨内に侵入し、骨代謝の調節や骨の再生に関わって骨量の維持に重要な働きをしていることを解明した。骨粗鬆症の発症にも関係し治療薬開発への応用が期待される。
骨の健康には骨代謝の維持が欠かせない。古い骨を破壊(骨吸収)してその場所に新しい骨を形成(骨形成)することで、血清中のカルシウム値を調節し骨の強度を保っている。
骨粗鬆症では骨の強度が低下して骨折のリスクが高くなるが、患者は1300万人に達する見込みで75歳以上の女性の2人に1人が発症するという。骨粗鬆症による骨折は寝たきりを招き、死亡率を高めている。
ホルモンなどが骨代謝を調節するという定説に加え、最近では神経の関連も明らかになってきたが、骨代謝のメカニズムの全貌はわかっていない。
感覚神経が骨代謝を調節する
今回、神経の伸長に関わるセマフォリン3Aに着目した。これを欠損したマウスは骨の細胞には異常がないが、骨密度が低下して骨粗鬆症の病態を呈した。解析の結果、正常マウスの骨には数多くの感覚神経が侵入していた。一方、欠損マウスでは侵入が低下、骨粗鬆症が発症しているとわかった。感覚神経の侵入が低下すると、骨の障害に対する再生能力も大きく低下していた。
以上から骨ができるときに侵入してくる感覚神経系が健康な骨の発達、怪我の後の骨の再生、治癒に重要であることが明らかになった。骨に侵入した感覚神経が骨代謝を調節する、とは骨代謝調節機構の新たな発見となる。
従来の骨粗鬆症の治療薬は骨の破壊を抑えるものだった。感覚神経に骨の再生を促す作用があるとわかったことで、骨の形成を促す治療薬の開発につながると考えられる。(馬野鈴草)
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慶應義塾大学プレスリリース
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