見直しに向けた論点の一つであるB型肝炎対策については、B型肝炎ウイルスの増殖を抑制するインターフェロン治療が治療法の一つとして行われており、HBs抗原の消失を日本肝臓学会が目標としている。今回の中間見直し案では、インターフェロン治療によるHBs抗原の陰性化率が5年後で約6%、10年後でも約15%と低く、ウイルスを完全に排除する治療法はない現状の課題に言及。インターフェロン治療で効果が期待しにくい症例では、核酸アナログ製剤の継続投与が行われているが、腎障害や骨障害などの副作用が問題となっていることも指摘した。
こうした現状を踏まえ、B型肝炎対策について、新薬を開発して臨床試験に導入するほか、HBs抗原の消失や核酸アナログ製剤の安全な中止による治療法の開発に関する研究などを進めるとした上で、抗ウイルス療法による5年後のHBs抗原の陰性化率を現状の約6%から約8%にまで改善するよう目標を引き上げる。また、肝硬変からの肝発癌率については、B型肝硬変では現状の年約3%から約2%まで改善を目指すとした。
C型肝炎に関しては、薬剤耐性ウイルスに効果のある薬剤を使用した治療法を開発した上で、C型慢性肝炎に対する抗ウイルス治療時の効果判定基準の一つであるSVR率を現状の約90%以上から約95~100%まで改善する数値目標に引き上げた。
肝硬変については、新規治療法の開発を目指すと共に、肝機能が著しく低下する非代償性肝硬変における生存率が50%になるまでの期間を現状の約18カ月から約24カ月にまで延長させる戦略目標を打ち出し、肝臓が十分に機能する段階の代償性肝硬変におけるSVR率についても、現状の約90%以上から約95~100%まで改善させる目標に引き上げた。
根治が難しく再発率が高い肝癌に対しては、発癌や再発を予防する治療法や予知する検査法、診断法を開発した上で、C型肝硬変で現状の約5~8%から3~5%まで改善するとした。
肝炎対策をめぐっては、12年を初年度とする肝炎研究10カ年戦略がまとめられ、今後の肝炎対策の方向性が示されていたが、中間年に当たる今年度の6月から見直しに向けた議論を行っていた。