同ランキングは、世界経済のイノベーション能力と成果を82項目で評価したもので、07年から毎年発表されている。16年は、スイスが6年連続でトップを維持。次いで昨年3位のスウェーデンが2位、昨年2位の英国は3位と順位を一つ落とした。さらに、4位は米国、5位フィンランド、6位シンガポール、7位アイルランド、8位デンマーク、9位オランダ、10位ドイツと、トップ10のうち欧州勢がほとんどを占めた。
一方、アジア勢では、シンガポールが6位でトップ、次いで韓国が11位、香港が14位、日本は前年19位から順位を上げて16位となった。特に中国が全体で25位にランクインし、過去9年間で上位を独占してきた欧米などと同じ先進国入りを果たしたことを示している。
その他のトップ10以下の順位を見ると、12位ルクセンブルグ、13位アイスランド、15位カナダ、17位ニュージーランド、18位フランス、19位オーストラリア、20位オーストリア、21位イスラエル、22位ノルウェー、23位ベルギー、24位エストニアと、欧州勢とオセアニア勢が大半を占めている。
先進国の日本、米国、英国、ドイツは、大学の質、科学文献、国際的な特許申請数の指標「イノベーションの質」で傑出していることも分かった。中国は、イノベーションの質でも17位にランクインし、新興国の中でトップとなった。
地域別に見ると、欧州はトップ25のうち上位3カ国を含め15カ国がランクインしており、ドイツは今年初めてトップ10入りした。ただ欧州全体では、企業から資金提供を受けている研究開発、ハイテク輸出、国際特許出願に改善の余地があるとされた。
米国は、国際的な研究開発を実践する企業があり、ベンチャーキャピタルを含めた金融市場の高度化、大学と科学文献の質などに強みを発揮し、世界でも最もイノベーション能力のある国として存在していると高く評価された一方、教育への支出、科学・工学分野を修了する学生の割合が低い高等教育、エネルギー効率性などで評価が低かった。
イノベーションには継続的な投資が必要とされているが、09年の経済危機以前の研究開発支出は年約7%ペースで増加していたが、今回のデータでは14年の研究開発支出の増加率がわずか4%だったことが示された。これは、ブラジルなど新興国の経済低迷に加え、先進国が研究開発予算の緊縮財政に踏み切ったことが原因とされ、報告書では「今後の懸念材料」と指摘している。