日本人とアジア人と欧米人6万人分のビッグデータを解析
理化学研究所は8月5日、非古典的HLA遺伝子のひとつである「HLA-DOA」が関節リウマチの発症に関わることを明らかにしたと発表した。研究は、理研統合生命医科学研究センター自己免疫疾患研究チームの山本一彦チームリーダー、統計解析研究チームの岡田随象客員研究員らの国際共同研究グループによるもの。研究成果は、米国の科学雑誌「American Journal of Human Genetics」オンライン版に8月4日付けで掲載された。
画像はリリースより
関節リウマチの発症には、これまでに多数の疾患感受性遺伝子が報告されており、特に、白血球の血液型を決定するHLA遺伝子が高い発症リスクを持つことが知られていた。しかし、複数種のHLA遺伝子が存在することや、HLA遺伝子配列の構造が複雑なため、具体的にどのHLA遺伝子が関節リウマチの発症に関わるのかについては、解明が進んでいなかった。
研究グループは、HLA遺伝子配列をスーパーコンピュータ上で網羅的に解析するHLA imputation法を活用することにより、日本人集団、アジア人集団、欧米人集団から集められた約6万人分の関節リウマチのゲノムデータに対するビッグデータ解析を実施した。
オーダーメイド医療の実現や新たな疾患治療薬の開発に期待
その結果、HLA-DOA遺伝子が関節リウマチの発症に関与すること、関節リウマチの発症リスクを高める遺伝子配列がHLA-DOA遺伝子の発現量を低下させていることがわかった。また、HLA-DOA遺伝子型における関節リウマチの発症リスクを人種間で比較したところ、日本人集団で最も高いリスクが観測された。
これまでの疾患ゲノム研究においては、HLA遺伝子の中で主要な古典的HLA遺伝子の解析が中心であり、非古典的HLA遺伝子については解明が進んでいなかった。今回、非古典的HLA遺伝子に属するHLA-DOAの関節リウマチ発症への関与が明らかになったことにより、今後、非古典的HLA遺伝子の役割の理解が進むと考えられる。また、個人の遺伝的背景に基づくオーダーメイド医療の実現や、新たな疾患治療薬の開発につながることが期待されると、研究グループは述べている。
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・理化学研究所 プレスリリース