米国セルジーン社との共同研究で
東京医科大学は6月24日、同大学ナノ粒子先端医学応用講座の半田宏特任教授および伊藤拓水准教授が、米国製薬企業のセルジーン社との共同研究により、急性骨髄性白血病への治療効果が期待できる新しいタイプの薬剤「CC-885」の開発に成功したと発表した。研究成果は、英科学誌「Nature」のオンライン版でArticleとして6月22日に出版された。
画像はリリースより
CC-885は、タンパク質分解にかかわる酵素(ユビキチンリガーゼ)であるセレブロンを標的としており、その機能を変換することにより抗がん活性を示す。セレブロンは、半世紀前に深刻な催奇形性を引き起こしたことで知られる薬剤サリドマイドの主要な標的因子として、半田特任教授および伊藤准教授が以前に世界に先駆けて単離・同定することに成功しており、2010年にScience誌に報告していた。
その後、半田特任教授らはサリドマイドおよび派生薬剤の治療効果におけるセレブロンの役割をさらに探求し、かつ成果を新薬開発に生かすために、サリドマイド派生薬剤を開発・販売するセルジーン社との共同研究を開始。セレブロンを標的として、その機能を変換することにより治療効果を発揮する新たなタイプの薬剤の開発に携わってきた。
セレブロン、CC-885、 GSPT1 の相互作用の分子基盤も解明
今回、半田特任教授、伊藤准教授およびセルジーン社の国際的研究グループは、急性骨髄性白血病(AML)細胞において、感受性の高い新化合物CC-885を表現型スクリーニングにより発見したとしている。
CC-885は、サリドマイドの派生薬剤の一種であり、セレブロンに結合して作用する。そして、伊藤准教授が免疫沈降法という実験技術を用いることにより、CC-885依存的なセレブロン結合因子GSPT1の単離に成功し、生化学・薬理学実験によりCC-885のAMLへの作用は、GSPT1分解が原因であることを確認した。さらに、半田特任教授らは、セレブロン、CC-885、GSPT1の相互作用の詳細をX線結晶解析により明らかにした結果、CC-885はセレブロンに結合すると、糊のような役割を果たし、GSPT1が結合できる相互作用の場(interaction hotspot)を作成することが判明した。
今回の研究成果により発見されたCC-885は、セレブロンの機能を変換することにより新たにGSPT1の認識をさせ、その分解を促すことでAMLへの効果を示す新しいタイプの薬剤。研究成果では、CC-885がAMLに効果を示すことを明らかにするだけではなく、セレブロン、CC-885、 GSPT1の相互作用の分子基盤も解明した。研究の知見を利用することで、他の疾患タンパク質の分解を誘導する新剤開発も期待されるとしている。
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